第2話 墜落して生きていた
あの墜落からどれほど経過しただろうか分からないが意識が戻った。恐らく飛行機の墜落から運良く生き残ったと思われる。
現在の状況は、誰かのキャリーバッグに上半身が乗り、それを浮輪代わりにして海に漂っている。周囲を見渡すと誰も居ない。佐藤も鈴木も居ない。何も見当たらない。絶望感が襲い吐き気がする。しかも全身の至る所が痛い。満身創痍の状態だった。
(こりゃ色々とマズいな。精神的にも肉体的にも限界だ。もう無理っぽいな…)
前方を見渡してみる。やはり誰も何も見えない。後方を振り返ると遙か先に島影らしきものが見えた。とにかく落ち着き、その陸地まで行くことにする。キャリーバッグをビート板代わりにバタ足で島へ向かった。想像以上に体力を消耗して年齢的な身体の限界を感じた。
泳いで数時間、何とか陸地へ辿り着いた。
「ハァハァ…。」
今日は人生最悪の日だ。だが生きてるだけマシか。飛行機の残骸や浮遊物が無かったが、どうなってるんだ?
意識が戻った時、周囲には浮遊物や航空機の残骸は見当たらなかった。一人で海に漂っている不思議な状況だった。この奇妙な状況は俺一人が機外に放り出されたのかと考えたが、それは無いか。飛行機の高度から落ちると衝撃で確実に死ぬしな。
(佐藤と鈴木…。あいつらも無事だったらいいけど。)
現在、島の砂浜にポツンと一人で立っている状況だ。
この島は暖かい。
今は凍えることは無いだろう。
この地域は亜熱帯地方でマカオ近くの島である可能性も考えられる。
何にしても、救助を求め、この状況を誰かに説明しなければ。
飛行機に異常が発生したのは間違いが無い。
しかも最低でも一人、俺が行方不明になっている。
当然ニュースになり捜索隊が出て世間は大騒ぎになるはずだ。
数日間を持ちこたえれば、必ず救助されると信じることにした。
まずは、この状況を現実的に把握し、救助を持つ。
そして生還するため冷静に行動をする必要がある。
このキャリーバッグはどうするか?
浮輪として役立ったが持ち歩くには邪魔だ。
とりあえず、そこの草むらに隠すことにした。
全身が痛く歩く事すら困難な状況だが、救助を求めるため海岸を歩きだした。
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