じめんがちかづいてくる

からす

あらすじ的な何か

ある日のこと。

主人公のA(14歳 〇✕県△△市)はいじめられていた。

教室から聞こえる声。


「帰れ」

「ほんとあいつと一緒に居るのいやなんだけど…」

「死ねばいいのに」

「帰れよ」

「帰れ」

「なんでアイツの隣なんか…」


これが彼の日常だった。


家族は頼れなかった。


数年前に父親が亡くなり、母子家庭だった。

母は朝早くから夜遅くまで仕事をして帰ってきていた。

姉は10歳年上の彼氏と数十キロ離れた県のおんぼろアパートで暮らしていた。

兄は物心つく頃には精神病で隔離されていた。


家族は頼れなかった。


先生は頼れなかった。


どうせ味方になんてならないと思っていた。

家で泣いていたせいで、遅刻する上に宿題もよく忘れる子供だったから。


面倒臭い子供だと思われていると思っていた。

定期的に先生を呼んでいじめっ子と話し合っていたから。


大人なんて子供を助けてくれないと思っていた。

この苦しみがわかるのは、同じ体験をした人間だけだから。


先生は頼れなかった。


本当は救いがあったのかもしれない。

彼がはねのけていただけなのかもしれない。

しかし、少なくとも彼に救いの手は差し出されなかった。


彼はあまり笑わない子供だった。


ある日のこと。

彼は一人の少女に恋をした。


その少女は、よく学校に居なかった。

どうやら少年院というところに送られることが多々あるらしい。

それでも、彼女は彼と話をしてくれる、数少ない人間だった。


彼はあまり泣かなくなった。


ある日のこと。

彼は家に帰って枕を濡らした。


彼女が他の男と付き合ったのだそうだ。

それも、その学校で一番頭が良かった男と。


彼はあまり笑わなくなった。


ある日のこと。

彼はとあるマンションの踊り場に居た。


そこから少し行くと、昔恋をした少女の家があった。


靴を脱ぐ。


足をかける。


近くで3,4人の子供たちが遊んでいる。


下を見る。


空中は歩けるのだろうか?


試してみよう。






じめんがちかづいてくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

じめんがちかづいてくる からす @krsalls

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る