不眠症のくまじろう

@satotumaru

不眠症のくまじろう

「ひつじが一匹……ひつじが二匹……」


冬が訪れ、動物たちが冬眠する頃、吹雪が吹きすさぶ森の中、静かな洞窟の奥でベッドに横たわる一匹のクマがいた。


「ひつじが9999匹……いちまん…………・くぁーーーー‼︎ねむれん‼︎」

ガバっとベッドから飛び出るくまじろうだが、「うわっ!寒っ‼︎」と叫んですぐさまベッドに潜り直した。

「もう真冬だ。早く寝ないと……」

焦るとますます眠れなくなる。なんだか寝る姿勢が悪い気がしたので、仰向け、右向き、左向き、うつ伏せ、といろいろ寝方を工夫してみるも、まったく眠れないのであった。

「うーん、どの体制でも眠れない……目の下にクマができちゃってるよ……熊だけに」

などと言ってもなかなか眠れない。他の動物たちはとっくの昔に眠っているだろう。


「眠いのに眠れない……もういっそ、麻酔銃に打たれたい……」

そう言った瞬間、ガバっともう一度ベッドから起き上がるくまじろう。

「その手があった!」

「そうと決まればすぐ行動だ!」

ダッシュで洞窟を抜け、猛スピードで森をお駆け降りていく。


ーー人間を襲えば麻酔銃で撃ってくれる‼︎ーー


森を抜けるとそこにはたくさんの民家と人間がいた。その人間たちに向かってガオーーーと両手を広げ威嚇するくまじろう。逃げ惑う人間たち。

すると突然、バキューン‼︎と銃声が鳴り響いた。


「ぐおお・・・これ、実弾やん・・・」


撃たれた箇所から血がじわっと滲み、くまじろうの意識はみるみる遠のいていき、目の前が真っ暗になったのであった。





真っ暗な中、視界に一筋の光が差し込んだ。

くまじろうはベッドから起き上がり、その光を目指してふらふらと洞窟を歩いた。

洞窟を抜けると、そこには暖かい空気と、元気いっぱいの森の景色が広がっていた。


「夢だったか」

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