それは心とろかす光のような
「ねえ、今からどこに行くの?」
車の窓から外を見ながら何気なく、九国さんに聞いてみた。
「もちろん、お嬢様の身を隠せる場所です。他者が容易に補足できなくて、護衛もいる所」
「私はあなたさえいれば、他の人なんていらないけど」
「ふふっ、有り難うございます。それは私もです。ただ、私も別にやることがありますので、本当に申し訳ないのですがずっとお側に居ることは難しくて・・・」
「そう、分かった。あまりあなたを困らせたくないし。じゃあ代わりにこれを」
そう言うとバッグから小さな箱を取り出した。
「それは・・・」
「ごめんなさい。ちょっとどこかに止まる事って出来る?」
「では、そこのコンビニに」
車が駐車場に止まると、私は取り出した箱を彼女に渡した。
「やっと渡せる・・・開けてみて?」
まるで高級グラスでも扱うように、丁寧に箱を触った後ゆっくりと開けた九国さんは目を見開いた。
「これは・・・ペンダント」
そう。終業式の日。
全ての始まりの日。
彼女とお揃いで買ったコインペンダントだ。
「そう。あなたにプレゼント。ずっと渡したかった」
「こんな・・・こんな素敵な物を、もったいない」
「ううん、受け取って。あなたの星座の物なの。私もお揃いのを持ってる。良かったら一緒に着けていたい」
「・・・一生大切にします」
「嬉しい。私もおばあちゃんになっても着けてるね。で、その時に言いたいことがあったんだ・・・ねえ、九国さん。良かったら・・・私と友達になってくれない?あんな事した後で今更な感じもあるけど」
私の言葉にクスクス笑うと、彼女は言った。
「でもそれとこれは別です。・・・私にとってお嬢様は友達よりも遙かに大切ですが、と言うことは友達でもあると言うこと。なので、喜んでお受けいたします。ふつつか者ですが今後とも末永く・・・」
「あ、いやいや、嫁入りじゃないんだから」
「そ、そうですね。失礼しました」
一緒に声を上げて笑った後、私たちはお揃いのペンダントを着けて再び目的地に向かった。
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