憧れた世界と現実の中で
翔也
第一章 先輩と後輩と
第1話
少し肌寒い朝、目覚まし時計が部屋の中で鳴り響く。
まだ寝ていたいがそうとも言ってられず、鳴り響く時計と止めて身体を起こした。
「……もう朝なの」
僕、
寝惚けている頭をゆっくりと覚醒させていき、制服に着替えて部屋を出た。
部屋を出るといい匂いが漂っており、ちょうど朝御飯が出来た頃合いのようだ。
「あ、おはよう」
「おっはー」
「おはよう」
リビングには既に母の
ちなみに父親は咲愛が二歳頃に死別し、三人暮らしだ。
「早く食べなさい。遅刻しちゃうわよ?」
「うん、分かった」
僕はなるべく早く食べた。やはり母さんの料理は最高だ。
食べ終わる頃には学校に向かわないと行けない時間に。
「いってきまーす」
「お兄ちゃん待ってー!いってきまーす!」
「気を付けてねー」
家から六分程のところで、中学生の咲愛と別ルートへ。
僕はそのまま駅前のバス停へ向かうが、咲愛は駅とは違う方向の中学校へ。
「……お兄ちゃんも気を付けてね?」
「咲愛もね」
中学生になったとはいえ、まだ甘えたい年頃。すごく寂しそうな表情を浮かべて、咲愛の通う中学校へ。
更に五分程歩いて駅前に着いた僕は学校へ向かう為、学校行きのバス停へ並ぶ。
「おはよう村越君。今日も早いね」
僕に声を掛けてきたのは同じ高校に通う
滝川先輩は校内ではそこそこ知られる人であり、僕と先輩は対照的な性格。お互いに同じ部活というわけでも、委員会に入ってるわけでもない。ただ同じバス通学というだけ。
「滝川先輩、おはようございます」
「今日は良い天気だねー。少し冷えるけど」
「ですね」
他愛の無い世間話に花を咲かせていると、バスが来たようで同じバス通の人達ですぐに満員に。
僕と先輩は前の方の席に二人隣り合った。僕は先輩の華麗な横顔を見ていると気付いたのか、此方に振り向く。
「あ、すみません……」
「ふふっ、顔赤いよ?」
「そりゃそうですよ。先輩は……魅力的な方なんですから」
「もうっ、ふふっ」
先輩も若干頬を赤く染めて口元を隠し、控えめに笑う。
無理もない、絶賛滝川先輩に片想い中なのだから。
滝川先輩はなにやらぶつぶつと呟きながら、うんうんと頷いていた。
暫くすると学校に着き、ぞろぞろと降り始めて気付けば僕と先輩だけに。
「私達も降りよっか」
「あ、はい」
先輩の後を追うようにバスを降り、そのまま校内へ。
昇降口に着くと二年である先輩と一年である僕は一度離れて、上履きに履き替えて再度合流。
「ふーん。村越君のそこなんだ?」
「それが何か……?」
「ううん、なーんでも。じゃあ私こっちだから」
そのまま先輩は階段の方へ姿を消した。僕はただその後ろ姿を眺めるだけ。
クラスメイトだろうか?先輩に近付く人が何人か居て、楽しそうに話していた。
それは僕の方にも起こった。
「おーっす。今日も先輩と一緒だってな?」
僕に話し掛けてきたのは同じクラスメイトの
「煩いな……放っておいてよ」
「んで、いつ言うんだよ?」
「うっ……」
なにかと意外と鋭くて僕が片想いしてることを感付いて、こうして相談にも乗ってくれたりする。
それに大樹本人は彼女が居て、その彼女もまたいい人だ。
「その辺にしなさい。大樹」
後ろを振り向くと物凄い剣幕で大樹を睨む女子生徒、
大樹曰く、上田さんはかなり独占欲の強い人らしい。
「なんだよ優衣、俺を取られてヤキモチか?」
「なっ……!ち、違うって言ってるでしょうが!!」
「ぐはっ……!」
大変仲が良いとは聞くけど……何故か大樹には当たりが強く本人も気にしているとか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます