第13話 建設地決定
あちこち回って場所は決まらないが、素材はだいぶ溜まってきた。荷物は異空間に放り込んでる。一番の大物は古民家や洋館がいくつか。
家を建てるところを決めて、建材確保に一旦町に戻るつもりでいたんだが、どうやら必要がない。帰りの足の確保も難しくなったので好都合といえば好都合。食事がしばらく黒い実になりそうだが。
変化前の建物が丸々魔素に漬かっていた。人と同じく、物も魔素に漬かって保存されている。ちなみに人間が行ける場所のそういったものは、誰かが回収済みだ。
俺が今色々見つけてるのは、ここが魔素が濃すぎて人間が簡単に入れない場所だからだな。
ウレタンやら合板やら、魔素が宿り難かった物は逆に早く朽ちてしまう。混ぜ物や、加工して性質を変えた物質に魔素は宿りにくい。例えば柱、無垢材は魔素が宿りやすく、集成材は宿りにくい。結果、古い家は残っているが、建売住宅はほぼ見ない。
古民家でも壁がなかったりする、たぶん後から手を入れて断熱材とか使ったのだろう。パイン材とか床板っぽいの単独とか、この辺はもしかしたら建売の名残かもしれん。
とりあえず片っ端から異空間行き。人が見ていないことをいいことに、好き放題している。体内の魔素は減るが、周囲の魔素が濃いので補充は早い。
ここまで濃い場所に居られることが、反則といえば反則なのだろう。全ての【聖痕】があって、飛び抜けて強いものがあるとはいえ、普通は無理だ。魔素を阻むような結界も使ってないしな。
能力を制限しているとはいえ、体は【魔王】なままなもので。
俺の家の敷地条件は魔素が濃くて――魔王を名乗る魔人がいるおかげか、魔素が濃いから魔王を名乗る魔人がいるのか謎だが、このへん一帯は魔素が濃いのでクリア。
五年以上人間が来ないような土地で――魔素が濃いし魔物だらけなので、人は滅多に来ないはず。【英雄】の存在があれだが、町と魔王城を結ぶ線からはだいぶ離れてるので大丈夫だろう。
魔人や意思ある魔物が住んでおらず――建物はないし、巣穴っぽいところは避けてる。たぬきは落ちてたが。
畑が作れて――ここでいいか。なんか知らんが棚田がある。
雪の残る深山。周囲は岩山が多いが、ここは土がある。この山で日当たりが良くて、水の確保が容易な場所ってあるだろうか? できれば棚田が眺められるといい。
湧水発見。
ここから棚田に流れてるな? ついでに魔素の発生源もこの湧水のようだ。水を通して広がっているらしい。地下には魔素溜まりができやすいので、そこを通って地上に出た水なのだろう。探せば地下ダンジョンがあるかもしれない。
木々が空を覆い隠し日当たりは悪い。だが、家を建てるのだ、ここの木々も伐採して使ってしまおう。そうすれば日当たりの問題も解決する。
湧水から続く流れに沿って移動し、家を建てるのに良さげな場所を物色する。うーん、だいたい似たような感じ。だったら水が湧く場所を含んだ土地がいいか。
動物というか魔物が水を飲みに来るなら、それより上流で水の利用をしたい。そう決めて戻る。
本格的に場所の確認。よし、なんとかなりそう。
あ、場所はここでいいとして、素材を先に採取せにゃならんか? 従魔の首輪の材料があると嬉しいが、魔物を倒さないと手に入らんのもある。
【勇者】と【魔法使い】の力では、ここ一帯の魔物に歯がたたん問題。あれだ、罠になる魔道具を作る方向で。
とりあえず採取や採掘――という名の異空間に放り込む所業を少々。さっきもこれやっていたな? と思いつつ、建設予定地に戻る。
狼から降りて、放すために振り向いたら俺が触った場所の毛繕いを熱心にしている最中。そんなに嫌だったか? 悪かったな。
狼の首輪を外す。思った通り、俺から注ぐ魔素が止まったとたん崩れて灰のようになった。
狼くんはさっさと視界から消えた。従魔の魔道具は、外した後しばらくは使用者に敵意をいだけず、跡は追えない仕様なので、偶然再会しない限り襲われることはない。狼くん、達者で暮らせよ!
狼くんを放し、適当に結界の魔道具を置く。1つで20メートル四方に効果を及ぼすのだが、ある程度以上の強い魔物には効かない。
濃すぎる魔素ごと魔物を弾くか、避けるかするタイプの結界が通常。俺は魔素は欲しかったので、結果この系統ではマイナーな魔道具に。
どんな素材を使えば一級品が作れるか、アリサも知らんかった結果、弱めの魔道具になってしまった。
まあ、姿を消す方の魔道具は割と強力なのができたし、大丈夫だろう。
俺は無事が確定してるから、大丈夫じゃないのは襲ってきたほうだし。
魔法で細い火を出し、木の伐採。もうちょっと【魔法使い】も強く設定しておけばよかったと思いつつ、巨木を何本か切り倒し、とりあえず異空間に放り込む。
切り株に手を当て、残った木の根を燃やし尽くし、転がる石は異空間行き。ちょっとズルして風魔法を使いたくなるのだが。スパッといきたいスパッと。いや、根ごと異空間に放り込めばいいのか。
家の周りの木はどうするか。後で考えよう、先ずは家を建てる場所の整地が先だ。野営の場所も作らないと。
盛り上がっている土を異空間に入れ、低いところで出す。平らな巨石を土の上でどすんと出しては異空間に放り込み、どすんと出しては放り込みして地固めする。
状態が良かった古民家を出してみて広さを確認。いや、洋館のほうがいいかな? 棚田は家の中からは見えないけれど、どっちもまあまあいい感じ。
1日過ごしてみて日当たりやらで本格的に家を置く角度を決めよう。今日は壁の崩れた仮置き古民家の土間でキャンプである。
上がらないのかって? 電気のない古民家怖いんですよ!! 洋館も!!! 中を見るのは昼間ね!!!!
――黒い不味い実が大活躍。
町から出るまでは異空間に食料を放り込むようなことはしてなかったので、まともな飯の量が少ない。狼くんを放す前に、魔物狩りに連れて行って貰えばよかったかな? ――解体できないけど。
狼くんについては、行き帰りの一日ずつのつもりで作った魔道具だったので、どちらにしろタイムリミットだったし仕方がない。
たぬきに使った魔道具の方が、狼くんに使ったものより強い物というか、長持ちするものだ。帰りに乗せてもらう魔物は吟味できるつもりでいたのでな。
たぬきはまだ起きない。『回復薬』の数には限りがあるんで、【聖者】の力を使ってちょっとだけ癒す。弱いけれど、かけ続ける魔素はどんとある。一般的には魔力と呼ばれてるものだな。
即時回復とかできるけどね、
狼くんは使役したけど、一時雇用と永年雇用では話が違う。相性も見たいし、同意は得たい。
それにしても丸いなこいつ。癒しの力を注ぎつつ、丸さを堪能。冬毛のたぬきの魔物か。
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