断罪されても虐めていても、何があっても悪役令嬢は笑い続けなければならない
仲仁へび(旧:離久)
第1話
その悪役令嬢は笑い続けている。
何があっても笑い続けている。
ずっとずっと、笑い続けている。
大変なトラブルがあったときも。
何もないときも。
誰かが不幸になったときも。
そうでないときも。
どうしてそんなに笑い続けるのかと、周囲の人間はいつも不思議に思っていた。
だから、興味の強い人間が彼女に聞いてみることにした。
そしたら「笑わない私に価値はないからよ」と悪役令嬢は答えた。
悪役令嬢は笑い続けないといけない。
どうしたって、笑い続けていないといけない。
余裕なところを見せ続けないといけない。
虚勢でもはりつづけなければならない。
悪役令嬢は自分が能無しだと知っている。
けれども、家の名前は能無しであってはいけない。
その有名な家に生まれた悪役令嬢は、生まれながらに大きなものを背負っている。
皆から、家のために全てを捧げなさいと、子供の頃から言われていた。
だから悪役令嬢は笑い続ける。
嫉妬でヒロインを虐め、心の中で申し訳なく思っても。
腹黒い者達と暗躍し、弱者を虐げることになって、心の中で涙を流しながらも。
断罪され、人々になじられる事になっても、家の者から見放されたくはないのだと。
けれど、そうして笑い続けた悪役令嬢の努力は実らなかった。
「こんなやっかいな娘、うちの子供でも何でもないわ」
家の為に動いていた彼女は家から追い出され。
家のために動きなさいと言っていた者達から、見放された。
それでも悪役令嬢はやっぱり笑い続けた。
そうする以外、感情を表明する方法が分からなくなっていたから。
断罪されても虐めていても、何があっても悪役令嬢は笑い続けなければならない 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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