かえちゃんの日常
Sae
第1話 私のために
「かえー、明日の授業参観行かれへんからなー。」とリビングから叫び声が聞こえた。私はかえ。11才小学6年だ。私のお母さんは看護師をしている。毎日クタクタで帰ってくるお母さんは他のお母さんより断然、仕事と家事を頑張ってやっている。ある日友達のめいが、「かえのお母さん来るん?」と言ってきた。仕事でお母さんは休めないので、私は首を横に振った。本当は少しきて欲しい気持ちがあったが、そこは我慢した。そして翌日朝起きてリビングに行くと、いつもより早くにお母さんが仕事の用意をしていた。「今日一緒の現場の人が風邪で休みなってしまってんて。お母さん早めに行かなあかんことになったから朝ごはん食べて参観がんばってきいや。」と言って髪を結びながら家から出て行った。私は悲しかった。お母さんと楽しく会話できる唯一の朝の時間がなくなってしまったから。私は半泣きになりながらもパンを食べた。そして暗い気持ちのまま学校の教室に行くと、めいが飛んできて「なあ、聞いて!今日お母さんきてくれんねん!めっちゃ嬉しい」と言ってきた。私は泣きそうになった。いや、あのときは多分半泣きだったと思う。そして1時間目、2時間目と進んでいき参観の5時間目、悲しさのあまり給食でいつもはおかわりしないパンまでおかわりしてしまい、お腹がはち切れそうだった。そして授業が始まって先生が用意していた保護者への問題を何人もの親が答えて行った。私はお母さんの姿が目に見えた。でもいるはずがない。だってお母さんは仕事に、、、おかしい、お母さんが立っていた。もう一度、目をこすって見てみると
こっちを見て手を振っている。私は心の中で飛びはねた。くるはずがないお母さんがきていたのだ。こんなに親が授業参観にきて嬉しいのは初めてだった。授業終了後お母さんのとこに走って行った。お母さんは私を抱きしめ、耳元で「いつも我慢させてばっかりでごめんな。これからはかえの気持ちもしっかり聞いてお母さん行動するな。ほんまにごめんな。」 と言ってきた。私は涙が溢れ出した。めいもその様子を見て少し泣きそうになっていた。そのあと、私とお母さんは手を繋いで家へ帰った。お母さんと手を繋ぐなんて何年ぶりだろう、そんなことを考えて歩いていると、お母さんが私に袋を渡してきた。中身をみると「かえ、お誕生日おめでとう」と書いてあった。そう、今日9月13日は私の12才の誕生日なのだ。自分で忘れる誕生日なんてあるんだな。と思うぐらい忘れていた。お母さんも忘れていたと思っていたが、まさかプレゼントを用意してくれていたなんて。うちは特別お金持ちでもないのに私のために買ってくれたことが嬉しかった。そして何より、12年前の今日お母さんのところに生まれてきたのが一番嬉しい。お母さん、私を産んでくれてありがとう。そしてここまで大きく育ててくれてありがとう。私たちはそのまま繋いだ手を離さなかった。いつまでもいつまでも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます