第15話 カメレオンになる

 私は、上級ダンジョンの情報を集めるために冒険者ギルドに行った。


 「リンダ、こんにちわ」


 「はい、テラ、こんにちは。お姉さんって、呼んでよ」


 「あぁ、すみません。リンダ姉さん。また、教えてくれる?」


 「いいよ、今度は、なに?」


 「この近くのダンジョンについて、知りたいの。できれば、上級ダンジョンの場所やダンジョンの階層マップが欲しいの」


 「そうねぇ。テラには、上級ダンジョンは、まだ、早いと思うけど、情報として知っておいてもいいね」

 

 私は、リンダから、近くのダンジョンの情報と上級ダンジョンの情報を得た。


 上級ダンジョンは、そんなに遠くないので、一度行ってみることにした。


 ダンジョンの出入口に監視員がいた。私は、通行料金を払って、ダンジョンの中に入ろうとした。


 「おい、どこへ行こうとしている。ここは、上級ダンジョンだぞ」


 「私は、冒険者で、IDも持っていますよ」


 「見せてみろ。なんだ、まだ、Eランクか。このダンジョンは、Cランクからでないと入れない」


 「そうなんですか。だめですか?」


 「だめだ。Cランクの冒険者と一緒であれば、いいがな」

 

 「それは、パーティーでないといけないのですか?」


 「いいや、パーティーでなくていいよ。

 Cランクの冒険者が責任をもって、同行するなら通してやる。

 だから、今日は帰れ」


 「分かりました」


 Cランクより下のランクでは、上級ダンジョンの中に入れて貰えないようだ。


 今の、自分のランクを上げるか、それとも、どこかのパーティーに参加するしか、方法がないようだ。


 なにか、いい方法はないのか、暫く、考えてみることにした。


 仕方がないので、賢者サビオに聞いてみることにした。私は、思念伝達で、賢者サビオに連絡を取った。


 「賢者サビオ、テラです」


 「テラ、どうしたんじゃ」


 「少し、教えて欲しいことがあるのですが、今、いいですか?」


 「急ぐのか?」


 「できれば、早く知りたいのですが、すみません」


 「手短に言いなさい」


 「はい、他の人に見えないようにできませんか」


 「テラは、魂に成れるじゃろ。だったら、簡単じゃないか」


 「いいえ、魂に戻るのではなく。そうですね。見つからないようにすることは出来ますか」


 「ふむ、迷彩じゃな。カメレオンの様になればいいのだろう」


 「あぁ、そうです」


 私は、何か違うような感じがしながら、でも、取り敢えず、教えて貰っておこうと思った。


 「闇魔法の光学迷彩魔法で、出来るぞ。今から言うから、しっかり、覚えなさい」


 「はい、お願いします」


 私は、賢者サビオに闇魔法の光学迷彩魔法を教えて貰った。後で、しっかりと、練習しよう。


 「だがな、これでは、上位のランクの者には通用しない」


 「えっ、どうしてですか? 見えないのでしょう?」


 「達人が目を閉じてでも、戦えるということを知らぬか?」


 「聞いた事はあります」


 「そうか、テラでも、多少は、出来るだろう。目を閉じてみよ」


 「はい、閉じました」


 「テラ、集中しろ! 外界のマナを感じるのじゃ!」


 「はい、なんとなく、気のようなものを感じます。マナの流れを感じることが出来ます」


 「よし、よし、それじゃ。それで、光学迷彩魔法だけでは、だめなんじゃ」


 「はい、納得しました。光学迷彩魔法だけでは、不十分なんですね」


 「その通りじゃ。それじゃな」


 「えっ、賢者サビオ、それも、教えてください」


 「テラ、お前は何でも欲しがるなぁ。少しは、努力しろ!」


 「すみません。次から、頑張りますから、それだけ、教えてください」


 「仕方がないのぉ。今回だけだぞ。次はないぞ」


 「はい、肝に銘じます」


 「よし、よし、教えてやろう。それは、光魔法の魔力迷彩魔法じゃ」


 「しっかり、聞きますので、お願いします」


 私は、次に賢者サビオから、光魔法の魔力迷彩魔法を教えて貰った。


 「それじゃ、テラ、頑張れよ」


 「はい、賢者サビオもお元気で」


 私は、賢者サビオに聞いた、2つの魔法を、何度も繰り返し練習した。


 しっかり、覚えることが出来たので、これからは、意識しないでも魔法を起動することが出来る様になった。


 「よし、実験だ。冒険者ギルドのリンダで、試してみよう」


 私は、冒険者ギルドの前で、闇魔法の光学迷彩魔法を起動した。そして、静かに、冒険者ギルドの門を潜り、リンダの前に立った。生憎、リンダは、後ろを向いていたので、顔を合わすことが出来なかった。


 「あら、テラ、どうしたの?」

 

 「えっ、リンダは、後ろに目が付いているの?」

 

 「そんなわけないでしょ」


 リンダは、クルリっと後ろを向いた。しかし、そこには、テラの姿はなかった。


 「あれ、可笑しいな。テラが居たと思ったのに。隠れていないで、出て来てよ!」


 リンダは、少し怒ったように、大きな声を出した。やはり、猫耳族のリンダには、私を感じることが出来るようだ。光学迷彩魔法だけでは、だめだ。


 私は、続いて、光魔法の魔力迷彩魔法を起動した。


 「ん、テラ、本当に消えた。ん、やっぱり、テラ、居る」


 「あれ、リンダには、私がいること、わかるの? 見えないし、感じないでしょ」


 「うん、見えないし、感じないけど、でも、匂いは残っている。テラの匂い」


 「そうか、匂いか。こりゃ参った。リンダには、参った」


 これでは、完全ではないのか。五感をなんとか、封じないとだめだ。


 「まだ、まだ、勉強が足らないなぁ。でも、暫くは、賢者サビオに聞けないしね」


 私は、苦手な考えることをやってみようと、思った。

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