探偵の恋心

俺の名前は、東山 恭兵(ひがしやま きょうへい)

俺のいる場所は、喫茶店

地元に、帰ってきてから毎日来ている。


突然だが、ここからは、少し過去の話をしよう。


俺は、高校時代好きな女がいた。

そいつは、料理部でいつも余った料理とか持ってきてくれたなぁ

特に、ガトーショコラが美味しかった。

ガトーショコラと珈琲はいつもセットだった。

でも片想いだった

あいつは、俺に興味なんて無かったと思う。

会う度に、文句しか言われなかったからなぁ…

ダメ元で告白しようと思ったこともある。

ただ、俺は警察官になろうとしてた。

どの道意味無いと思ってしなかった。

あいつには、警察官になる為に上京するんだ

とだけ伝えた。


警察官になりたかったのは、人を助けて、

笑顔に出来て、守れるからだ。

それで、警察官になりたかった。

結局、警察官になるのは諦めたんだけどな。

まぁ諦めた理由は……向いてなかった

それだけだ……

それで俺は、探偵になった。

しがない探偵………

依頼は、ペット探し、浮気調査、人探し

ペットを探すのには、時間が掛かり依頼主から怒られて

浮気調査は、浮気していると知った途端に依頼人が発狂して事務所の家具達を壊されて

人探しは、俺の苦手な分野だ。

東京に居るのが嫌になってしまった。

そして俺は、地元に戻った。

フラフラとした足取りでたまたま見つけた

喫茶店に入った。

この喫茶店の珈琲が美味しく

いや、あいつが入れてくれた珈琲の味にそっくりだった。

だから

毎日、ここに来るようになった。

ここは、珍しく女マスターだ。

あいつには、似てないが

まぁ綺麗な人だ

話した事は、注意される時しかないなぁ……


俺の過去はここまでだ

何語ってるんだか

はぁ

一服するか


女マスター「お客様、毎度言ってるけどタバコやめてください。」


いつもは、これを言われたらやめるが………

今日は、抗いたい気分だった。


恭兵「いいじゃねぇか。毎日来てるんだからよぉ。」


女マスター「はぁ……毎日と言っても珈琲しか頼んでくれませんけどね。」


恭兵「おっ俺の事覚えててくれるんだな。」


女マスター「それは…………分かりますよ。」


恭兵「それもそうか(笑う)」


女マスター「あなたは、私を見てどう思います?」


恭兵「なんだ急に、まぁ綺麗だと思うけど。」


女マスター「…………そうですか(溜息)」


恭兵「どうしたんだよ。」


女マスター「なんでもありません。毎日来てくれるのに、あまり話した事無いと思っただけです。」


恭兵「なんだよ。まぁなんか話すか。」


女マスター「そうですね…今日は、お客様いないですし、特別ですよ。」


恭兵「とは言ったもの、何を話せばいいんだ。」


女マスター「それじゃ、職業は?」


恭兵「…………はぁ探偵だよ。」


女マスター「探偵……だから毎日来れるんですね。」


恭兵「なんだよ、悪いか?」


女マスター「(笑って)いえ、有難いなって思っただけです。」


恭兵「なにがだ?」


女マスター「いえ、なんでもありません。そうですね、どんな依頼受けてるんですか?警察から依頼とかは?」


恭兵「テレビの見すぎだなぁ…そんなの来たこともねぇよ。依頼は、浮気調査やペット探し。それと……」


女マスター「それと……なんで言わないんですか?」


恭兵「人探し……人を探すのは、苦手なんだよ。」


女マスター「なんで、苦手なんですか?」


恭兵「……普通に、抵抗があるんだよ…」


女マスター「抵抗?」


恭兵「人が居なくなるのには、理由がある。それを探して良い理由が無いからだよ。」


女マスター「ふーんそうなんですね。」


恭兵「はいはい。まぁ俺の話は、いいんだ。マスターの話を聞かせろよ。」


女マスター「私のですか……話す事なんて無いと思いますけどね。」


恭兵「なんでだよ!俺は、マスター事何も知らねぇじゃん。」


女マスター「……かん……から。」


恭兵「あっなんて?」


女マスター「なんでも無いです。」


恭兵「あぁそうかよ。で何の話してくれるわね?」


女マスター「……そうですね…………急に言われましても思いつかないです。」


恭兵「それもそうか。じゃなんで喫茶店を経営しようと思ったんだ。」


女マスター「私は、ずっと待ってる人がいるんですよ。その人の為に経営しようと思ったんです。」


恭兵「待ってる人?」


女マスター「えぇ、あっそれでは、ついでに依頼しますね。」


恭兵「依頼……それってまさか……」


女マスター「はい。人探しです。その方を探してほしいんです。」


恭兵「はぁ……人探しは、苦手だが…仕方ねぇ!マスターの為だ。依頼受けよう。」


女マスター「お願いします。」


恭兵「で、誰を探して欲しいんだ?」


女マスター「私の……私の初恋の人です」


恭兵「初恋の人!!!」


女マスター「はい。その人を探して欲しいんですけど。」


恭兵「うーん……名前とか、特徴とかは?」


女マスター「……名前は、……お客様が本当に探偵か見極める為に内緒にしますね。」


恭兵「なんだよ、それ。」


女マスター「特徴は……馬鹿で、鈍感で、聞き分けが無くて、なんでも突っ走る……私の作った物を美味しく食べる姿とか好きだったんですよ。」


恭兵「何が好きだったんだ?」


女マスター「私は、料理部だったんです。それでいつも作ったのを彼に食べさせて……特に、ガトーショコラと珈琲が好きだったんですよね。」


恭兵「へぇーでもなんで別れたんだ」


女マスター「付き合ってないですよ。言ったじゃないですか?初恋の人だと。」


恭兵「あーそういえばそうか。じゃなんで、そこまでして付き合わなかったんだ?」


女マスター「……彼は、夢を追いかける為に上京するって言ったんです。止めたい気持ちもあったんですけど、止められなかったんです。」


恭兵「ふーん、なるほどなぁ。」


女マスター「それに私から、告白するのは、恥ずかしかったんです。だから待っていたのも悪かったんです。両想いだと思ったんですけど」


恭兵「…………なるほどなぁ。」


女マスター「これだとヒントが少ないですよね。やっぱり名前の方言いましょうか?」


恭兵「イヤ、いいよ。今日は、時間が無いから今の内容で見つけるよ。」


女マスター「そうですか……」


恭兵「じゃあ、ごちそうさん」


女マスター「ありがとうございました。」


そのまま俺は、店を出ていった。

そこから俺は、店に行かなくなった。


女マスター「……本当に鈍感なんだから……」

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短編集 暁 成 @naru01

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