ラブコメ、黒一点
@LK-021
過去編1 世界と平等
世界は不思議に溢れている。
現実とは、小説より奇なり。
そんな言葉がある。
それらを題材にした創作物は溢れているが、それは現実ではない、空想だからこそ溢れ、人々を魅了していたのだ。
そう、いたのだ。
さて、本題に入ろう。
私の双子の兄妹、片割れは不幸体質だ。
歩けば転び、走れば転がり、止まれば飛来物が襲い、良ければ鳥の糞が爆撃してくる。
そして、トラックがロックオンしてくるのだ。
そんな片割れとは真逆に、私は運が良かったのだ。
私が手を握れば転ばず、共に走れば私が転がる前に止められ、飛来物は避けて行き、鳥の糞は別の鳥に落ちる。
だが、それに自惚れていたのが悪かったのだろう。
私は、片割れを守ろうと全力で片割れを投げ飛ばした。
普段なら、何事もなく片割れと危なかった、怖かったなど言い合って抱き合っていたのだろう。
正直に言おう。私は、慢心していた。
だから、私は片割れの目の前でトラックに押し潰された。
私が最後にみたのは、片割れが唖然としながら目と口を開けている顔だった。
全身を弾き飛ばされる最中もう、目覚めることは無いのだろうと思いながら私は意識を手放した。
そして目が、覚めた。
覚めたのだ。
覚めたのが日が登る寸前であったから最初こそ、ここが黄泉の国かと思ったが、時間が過ぎていくように部屋に光が差し込んでまだ生きているということを自覚した。
自覚した途端に感じたのは猛烈な喉の渇きと強烈な頭痛だった。歯を食い縛って何かが迫ってくる音を聴きながら再び意識を手放してしまった。
そして、再び目が覚めると視線の先に目覚めたら右手のボタンを押せ、という内容の文字を書いた紙が貼られていた。
感覚の鈍い左半身に疑問を感じながら右手を動かそうとするが、うまく力が入らず苦戦した。
まぁ、小学5年生の女児がトラックに潰されて生きていたのだから手足も動かせなくなるか。なんて、そのときは楽観していた。
そして、マシュマロのような体の医者に半年間昏睡していたこと、体に後遺症が残ることを伝えられた。
それと同時に生きていたことが奇跡だったということも励ましと共に伝えられた。
奇跡だったと言うのは、本当なのだろう。この期に及んで自惚れるつもりはないが、運が良かった、奇跡だった、としか言いようが無かったのだから。
そして、どのくらいで体は動かせるか聞くと、マシュマロ医者の顔がこわばり、看護師達が目元や口元を押さえていて、小さくごめんね、と聞こえた。
その視線の先で、私はあぁそうか、なんて察した。
右側の手足の感覚は微弱ながら戻っているのに、感覚の鈍い、いや、無い左腕と左足は既に無かったのだ。
だが、まぁ………私は死んだ訳でないし、手足の一本や2本で私の片割れを守れたなら、安いものだ。
蓮、私の魂の片割れ
お前が無事なら、良いのだ
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