12.明日はお家を探しにいく

 魔族の集合は、時間がかかるみたい。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが連絡を回してくれるって。今日はこのまま休むことにした。


 お父さんは火の竜だから熱い部屋が好き。火を噴く山の上の方に住んでいる。お母さんはお祖父ちゃんと同じで、ひんやりした氷や水が好き。古い洞窟の奥にある、冷たくて湿った部屋だった。


「ウェパルは何が好きだ?」


「乾いた草のあるお部屋で、暑くも寒くもないところ」


 お祖母ちゃんの洞窟みたいなお部屋だよ。いつもはお母さんと眠るんだけど、ちょっと寒いの。だからしっかり抱きしめてもらっていた。ベル様の腕の中は温かくて、寒くなくて好き。そう付け足したら、額に口付けをくれた。


「ウェパルの種類がよく分からないのです」


 お母さんはベル様にそんな話を始めた。ドラゴンは、お父さんかお母さんと同じ種類で生まれる。でも僕はお母さんの卵から生まれたのに、氷や水、炎もすべて苦手だった。珍しいけれど、いないわけじゃない。


 祖父母に似るドラゴンもいるけど、お祖父ちゃんはお母さんと同じだし、お祖母ちゃんとも違っていた。だって背中が緑でお腹が茶色じゃないんだもん。銀色の鱗は誰もいない。


「ウェパルは特別な子か」


「ベル様はこの色好き?」


「ああ、綺麗な色だと思うぞ」


 そっか、誰とも似てない僕だけど、ベル様が好きな色ならいいや。きっとベル様に会えるのを待っていたんだよね。


「一緒に住む洞穴を探そう」


「うん!」


 人間が来ない高い山の、どこか。暑くも寒くもない場所。明日、探しにいく約束をした。お母さんは「寂しくなるわ」と言ったけど、お祖父ちゃんの洞窟に引っ越すみたい。お父さんも仲間がいるし、皆寂しくないよ。


 お祖母ちゃんの洞窟は山丸ごとだから、大きい。仲間もいっぱい住んでるけれど、それでもいっぱい場所が空いていた。壁際の一箇所を借りて、巣を作る。


「ウェパル、作れるのか?」


「乾いた草があれば出来る」


 お祖母ちゃんのお手伝いをしたことがあるの。胸を張って断言したら、お祖母ちゃんが草を分けてくれた。


「ありがとう」


 お礼を言って、貰った草を山と積み上げる。それから上によじ登って……苦労している僕のお尻を、ベル様が押してくれた。転がるように上に乗って、お礼を言う。それからくるくると回り始めた。真ん中を低くして、周囲を高くする。それで丸く形を整えて。


「できた!」


「ふむ……よく出来たな」


 褒められ、口付けを頬に貰った。僕を抱っこしたベル様が草のベッドに寝転び、お腹に僕を置く。重くないのかな? 僕はベル様の頭二つぶんくらいあるんだけど。


「ウェパルは良い奥さんになれるぞ」


「本当?! やった!」


 喜ぶ僕をお母さん達も褒めてくれた。今日は皆でお泊まり……お祖父ちゃんだけいないね。そう呟いたら、お祖母ちゃんが呼んでくれた。僕が作ったベッドの周囲で、皆が丸くなって眠る。


 明日は新しい洞窟を探すから、見つけたらまた一緒に寝られるかな。わくわくしながら目を閉じたけど、眠くならなくて。ベル様が何か呟いたら、すっと寝ちゃった。子守唄だったのかも。

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