第21話 休息
五階は休憩ポイントだと書いてあっただけあって、テントが立っていて寝るスペースもあった。
私達はひとまずそこで休憩を取ることにした。
「ライオス、噛まれたところ平気?」
「ああ。ニコが治してくれたからな」
「ライオス様に大きなケガが残らなくて良かったですわ」
ニコが微笑む。
いてくれて良かった。噛まれてしまったのを見た時はどうしようかと思ったからな。
ニコのおかげでライオスは無事だ。
好きな相手を助けることができたからか、二コも嬉しそうだし良かった良かった。
「ヴォルフも大丈夫?」
「まあ、疲れたぐらいのもんだから休めば大丈夫だ」
すでに休む体制をとりながらヴォルフは言った。
いくらオオカミだとしても、私を乗せながらの長距離移動、先程は全速力で駆け回ってもらった。
それは疲労が蓄積されているだろう。
「ゆっくり休んでね。私も疲れちゃったや。というか、お腹すいたなあ……」
何も飲まず食わずで動いてきた。
さすがに何かを食べたいところではある。
このダンジョンは時間が分からないのでどれほどの時間が経ったのかは、分からないのだが。
何か食べたいとは思ったものの何もなさそうだな。
そう思っていたら、いい匂いがしてきた。
その方向を見てみると
「白米⁈お味噌汁⁈なんであるの⁈けど、食べたかったから嬉しすぎるよー!」
そう、日本で食べていたものがあった。
突然湧いて出てきたそれは、得体の知れないものではあるが、今の空腹状態でそれを見てしまえば耐えられるわけがない。
なので、すぐさま一緒に置いてあった箸を取り
「いただきます!」
と、手を合わせ食べ始めた。
久しぶりに食べる白米は少しの甘みがあり、口いっぱいに広がる暖かさがとてもいい……あーこの感動がうまく伝えられない。
とにかく美味しい。これだけは届けたい。
「セリナが食べているそれはなんだ?害はないのか?」
ライオスが聞いてきた。
確かに急に出てきたものを食べていたら不審に思うよね。
「白米っていう食べられるものだよ。害もなかったし安心して!」
私は親指を立てて言った。
白米の説明までする必要があったのだろうか。だが、ライオスがそれはなんだと聞いてきたからな。この世界には伝わっていないのか?なら、何故今この場所に突然現れたのか。なんだか考えなければならないことがある気がする。
しかし、それは今ではない。
久しぶりに食べることのできる日本食を堪能したい。
白米とお味噌汁だけでも、十分日本を感じることはできるから。
「では、いただきます」
ライオスが見様見真似で箸を持つが、やはり扱いが難しいようで掴まないでいた。
「こうするんだよ。ニコも一緒に食べよう?美味しいよ?」
私は箸の使い方を教えながら、警戒心強めの表情で見ていたニコを呼びかけた。
すると、すぐに箸を持ち、私が使い方を教えてから食べ始めた。
「お、美味しいですわ〜」
ニコは頬に手をあて、とても美味しいという表情を浮かべた。
ライオスも同意するように頷いている。
美味しさが伝わって良かった。
異世界にまで伝わる白米の美味しさって、冷静に考えればすごいのでは?
冷静に考えなくても、か。
「ヴォルフには食べさせられなくて……ごめんね?」
私はヴォルフの頭を撫でて言った。
「気にすんな。オレは寝る」
そう言った直後、寝息が聞こえてきた。
寝ると言ってからの速度が早すぎる。
毎度のことだけれど。
私達はこうしてご飯を食べながら、休憩を楽しんだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます