第19話 私の力

「五階まで行ったら休憩ポイントがあるんだよね?」

「そう書いてあったな。ここのダンジョンは下に行くごとにレベルが上がっていくようだ」

「なら、五階まで行こう!何かあったらお願いします!」


他力本願のようだと思われたら実際そうかもしれない。だが、私だって何もしないとは言っていない。私はみんなにお願いはしたけれど、私にできることは精一杯するつもりだし。

 これは他力本願なのではなく、信頼しているから出た言葉である。

 

 私達は、とりあえず一階を散策することにした。散らばらず、まとまった行動をとっている。散らばってしまえば生存率は格段に下がる。私に至っては、戦闘経験が何もないまま来たし。

 私が一番役立たずだということは自分でよく分かっている。だからこそ頑張るのだ。

 テイマーというスキルがどういうものなのかも知っておきたい。


 散策をしていると、どこからか音がした。


「近くに何かいるぞ!」


ライオスが剣を構えた。

 すると、何百匹ものハムスターが一斉に襲いかかってきた。

 ハムスターは牙を使って攻撃してこようとする。前歯は硬いものを砕くためにあるので噛まれたら相当なダメージがくるだろう。

 しかし、一度はハムスターに囲まれてみたいという私のもふもふ大好き魂が叫んでいる。

 この場合は自分の身の安全を確保した方がいいだろうと、断念する。

 断念したはいいものの、ハムスターの勢いは止まらない。

 鍛えあげたと書いてあっただけのことはある。っと、感心している時ではないな。


「ライオス、私はなにしたらいい⁈」


剣で対処しているライオスに聞く。


「セリ、お前オレに最初に会った時のやつやれよ」


ヴォルフが先に答えた。

 最初に会った時……咄嗟にしたことだったし、この数相手に効くのか不安だけれどするしかないな。

 私は両手を前に出し


「『止まれ!』」


 と、念じた。

 ハムスターの動きは止まった。

 

「そのまま集合させることはできるか?」

「やってみる」


私が「『集まれ』」と言うと、集まっていった。


「『退散しろ』」


私が命じるとハムスターの軍団はどこかへと去っていった。

 これが、テイマーの力なのだろうか。

 だとすれば、この力はとんでもないものだ。動物に命令を聞かせることができる力。

 どこまでのことができるのかは定かではない。けれど、持つ者によっては悪用されそうだ。


「セリナ様の力、すごいですわね」


ニコが拍手をしてくれた。

 その音で私は元に戻ることができた。

 あのままでは悪い方向に考えを進めてしまっていた。


「ありがとう。じゃあ、どんどん進もうー!」


切り替えて、下の階へと歩んでいくことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る