第18話 始まる
「さて、行くぞー!」
私は片手を上に突き上げ気合いを入れた。
道中でスライムに会わなかったらいいなあと思いながら。
報酬はゲットできるけれど、通行の邪魔はしてほしくないのだ。
「行くぞって、進むのオレだろ!」
「うん!」
「『うん!』じゃねえよ⁈」
ヴォルフは嫌そうにツッコミをしてくる。
なんだかんだ乗せてくれるのだけれどね。
「いつもこうなんですの?」
「ヴォルフとセリナはいつもだな。まるで旧知の仲のようだ」
ライオスとニコがそんなことを話している。
旧知の仲って……知り合って日は浅いのにな。話しやすいしふざけやすいのは認めるが。
「セリは変な奴だからな」
「変な奴ってなに⁈」
「だから面白いんだっつーの」
ヴォルフにとって面白いは褒め言葉。
そして、私が面白いからこそついてきてくれている。
「ありがとう」
私はお礼を言った。
「んだよ」
「いつも乗せてくれるお礼!ってここじゃない?ダンジョンって」
背中から降りて、目の前にあるものを指差した。地図と照らし合わせてみても、間違いない。
「ここだな」
「皆様もこの場所を目指しておられたのですね」
も、ということはニコが来る予定だった場所はやはりここだったのか。
早速入ろうとしたら、看板が立っていたので私はそれを読む。
「『このダンジョンは私が作ったものである。鍛え上げたモンスターを倒し、私の元までやってくるのだ。五階ごとに休憩ポイントも作ってある。ただし、ボスを倒さなければ安眠はできないと思え。私を退屈させるなよ』」
そう書いてあった。
このダンジョンは作られたもの。てっきり自然にできたものだと思っていたのに、違ったようだ。
鍛え上げられたモンスターというのは怖い。けれど、怖がっていては何も始まらない。
「よしっ、頑張るよ!」
私達の、ダンジョン攻略が今始まる。
始まる、とかっこよく言ったはいいが、中に入った瞬間にゾッと、背筋が凍った。
中は暗く、辺りは見えない。
私は暗いところにはなるべく行きたくないというタイプなのである。
お化け屋敷とかも極力入りたくなかったからな。
そんな私が暗闇に入るとどうなるかというと……
「ぎゃー!待って待って、暗すぎるって‼︎戻ろう⁈」
当然こうなるわけでして。
声量が大きすぎて、ニコは耳を塞ぐしヴォルフにはうるさいって言われるしで、踏んだり蹴ったりだ。
「セリナ、どうだ?これで大丈夫か?」
ライオスは炎を出している。
そしてそれをダンジョン内に落ちていた枝につけた。
そうしてくれたことで、少しだが明るくなった。
「明るい……それは嬉しいんだけど、その枝燃えないよね?」
「燃えないようになっているからな」
そう言ってくれたので、ホッとした。
暗くなくなったことで、ここから先に進めるようになった。
私がただ騒いでいただけなのだが。
入り口で止まるとかにならなくて済みそうだ。良かった良かった。
再びだが、私達のダンジョン攻略が今、始まった。
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