第5話 狼と冒険だ

「なによ、面白そうって!」

「ラビのことじゃなくてセリのことだっつーの」

「そんなの分かってるわよ‼︎」


 ラビは天敵だって言ってたけどなんだか……


「仲いいんだね?」

「「良くない!(ねえよ!)」」


 声を合わせて言った。

 そういうところで仲がいいと感じるのだけれど。

 言ったら面倒になりそうだからやめておこうかな。


「んーとさ、ヴォルフ。ついて来てもいいよ。ただし、ラビと喧嘩しないこと!」


 私はビシッと指をさして言う。

 旅の最中に喧嘩をされたら気まずくなってしまうのでそれは避けたい。


「おう、わかった。よろしくな」

「うん!よろしくね」


 私とヴォルフがそう話をしていると、ラビが嫌そうに言った。


「なんでこいつと……」


 やはり勝手に決めるのはいけなかったか。

 あっ、そうだ!


「まぁまぁ、ラビ。移動手段をゲットしたと思えばいいじゃない。背中に乗せてくれるかもしれないよ?」

「は?オレ、んなこと言ってな……」

「それもそうね!」


 否定しようとするヴォルフを無視し、ラビが嬉しそうに言った。


(ごめんよヴォルフ。でも、私も狼の背中に乗ってみたいんだ。某姫のようにね)


「仕方ねえなぁ、乗れよ。毛がついて嫌じゃねえならな」

「本当にいいの⁈」

「嫌って言っても聞かないだろ」

「そんなことは、ない、はず」

「言いきれてねえじゃねえか‼︎」


 乗ってみたい気持ちは抑えられない。

 嫌と言われても、そこをなんとか!と言いそうだ。否定しきれないのもそのせい。


「まあいいから早く乗れよ。まだ奥行くんだろ?」

「わーい!ありがとう!」


 私は乗りやすいようにしてくれてたヴォルフの背に、またがった。

 手を置けばもふもふ。なんて素晴らしいのだろう。


「ラビも早く乗っちまえよ。うさぎの足だとちょっとずつしか進めねえだろ?」

「あ、ありがと」

「それとも運動不足だから自分で歩くか?」

「余計なお世話よ!」


 ラビがヴォルフの背に乗った。

 なんだかんだ、ラビには優しい。


「おい、このまま真っ直ぐでいいのか?」

「もふもふがいるとこならどこでも!」

「そーかよ。じゃあ小っちぇ鳥がいるとこでも行くか?確か……ひよこだっけな」

「ひよこ?行きたい!」


 ヴォルフは、「りょーかい」と言って進んでくれた。

 ひよこか、この世界にもいるんだ。

 可愛くて、手におさまって、もふもふ……最高の動物だ。


 大きくなったらもふもふ感は薄れるけど、それもまたいい。

 そんなことを考えていたらヴォルフに声をかけられた。


「こっから近道すっからちゃんとつかまっとけよ!」

「え⁈」


 それから宣言通りヴォルフは、速く走り岩場の道を進んだ。

 これは乗っている方が疲れる気がする。

 ジェットコースターのようで少し楽しい。

 けれど……限度というものがある!と思ったら止まった。


「はぁはぁ……」

「なんでセリの方が疲れてんだ?」


 私は、ヴォルフのせいだよ!と言いたかった。けど、声が出なかった。


「あんたね、とばしすぎよ!」


 代わりにラビが言ってくれた。

(ありがとう、ラビ)


「そうか?いつものことだけどな」


 いつものこととは思えないスピードだったのに?


「いつものことでも、少しは加減してほしいなぁ…なんて」

「次からは気をつけてやるよ」

「うん、よろしくね」

「つーか、こっからまだかかるけどこの先夜は危ねえから、今日はここで泊まったほうが良くねえか?」


 確かに、あたりは暗くなってきた。

 けれど、野宿か……初めてだな。


(怖いけど、なんかワクワクする!)


「そうね、今日はここで休みましょう。近くに水もあることだし」


 ラビがヴォルフの提案にのる。

 私もそれに賛同した。


「じゃあ決まりだな。寝る時はオレの近くにいろよ。お前ら小っちぇから襲われでもしたらやべえだろ」


 一言多いけど、言ってることは優しい。


「はーい」


 私が返事したあとヴォルフが


「んじゃ、オレ飯とってくっから水浴びでもしてこい」


 と、どこかに歩いていった。


「どっか行っちゃったねぇ」

「果物とか取りに行ったんでしょ」

「そっか、気がきくね。ヴォルフって」

「口が悪いくせに、そういうとこはいい奴なのよ。だからムカつくんだけどね!」


 ラビは鼻をフンッと鳴らした。

 そんなに嫌なのだろうか。

 いいコンビだと思うんだけど。やりとりを聞いてると楽しそうだし。


「セリ?水浴び行かないの?」

「あっ、待って〜」


 私はラビについて歩く。

 少し歩いたら水場が見えた。


「キレイな水だから使えると思うわ。はい、タオルも渡しておくわね」

「ありがとう」


 タオルがないからどうしようかと思っていたら、渡してくれた。


(良かった〜)


 ちょっとだけ水をかけて、あとでどうにかしよう。水のなかに入るのはさすがに寒そうだ。

 それから少しの時間水場にいた。

 そのあと拭いてから、元の場所に戻った。

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