動物と話せるようになったのでもふもふを堪能させていただきます!

紫吹 橙

第1話 プロローグ

 目を開けたら——もふもふなうさぎに囲まれてる⁈


「ちょっと、あなたどうしたの!起きなさい!」


 二足で立ってるうさぎが喋ってる⁈

 なにそれ可愛い‼︎

 って、そうじゃなくて、なんでこんなことになっているのやら……

 ————————————————————

 えーっと、たしか——

 そうだ、私は仕事からの帰りで歩いていた。

 いつも通り動物園で働いて動物のお世話をしてもふもふに囲まれたからって幸せな気持ちで歩いて帰ってて——

 あっ、その時に急に誰もいないのに工事現場から鉄骨が落ちてきたんだったっけ……


 そうか、私、あの時死んだんだ……周りには誰もいなかったから大丈夫だとは思うんだけれどね。

 なんだか実感が湧かないんだよなあ。

 だって、目は開くし、身体も動かせるだろうから。

 というか、それより私はっ


 私は勢いよく起き上がった。


「あっ、起きたのね!良かったわ。ちょっと、なにするのよ⁈」

「はーもふもふだ!しかも意思疎通できるって最高ー‼︎」


 私は立っているうさぎに飛びついた。だってすごく毛が白くてもふもふそうだったから。もふもふしているものが好きな私のセンサーにびびっときたのだ。


「当然でしょ?私は毛のケアは欠かさないもの!それより離しなさいよね‼︎」

「はっ、ごめんなさい!もふもふを見ると気持ちが抑えられなくて……」

「まぁ、それなら仕方ないけど……って、こら!」


 言われた通り離れたけれど、我慢できず他のうさぎを抱きしめた。他のうさぎも毛並みがきれいでもふもふしていそうだったから。


「あっ、つい……」


 私はうさぎを抱きしめながら言った。昔からなのだが、私はもふもふを見ると気持ちが昂り抑えられなくなる。抑えようとは思っているのだが、どうしてもねえ。だから飼育員という職について思う存分動物達を愛でようと思ったのだけれど。


「本当に好きなのね……その子達は私の仲間なんだからほどほどにしてよね」

「はい!わかりました!」


 私は許可をもらったので、もふもふを堪能しまくった。


「さっきまで倒れてたのが嘘みたいね。そうだ、なんで倒れていたのかしら?」

「あーそれは、わからないんだよね……」


 自分が亡くなったのは分かったんだけど、私がここにいる理由は分からない。

 どうしてここにいるかは本当に分からないのだ。自分が亡くなってしまったというのに気づいたのもつい先程のことだしな。


「あなた自分でここに来たわけじゃないの?」

「うん、目を開けたらこの場所にいたんだ。それに喋るうさぎを見たのも初めてだよ」

「初めて?ここらにはけっこういるのに?」

「えっ、なにそれ楽園?」


 二足歩行で、喋るうさぎがいっぱいいるって……

 はぁー囲まれたい!もふもふしたい!あわよくば一日中!

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