決闘

 ふと、ノースはパルシュに下げていた剣の一つをなげだした。それを受け取るパルシュ。すると、パルシュはその剣から魔力があふれてくるのを感じた。

「俺はなあ、パルシュ……たしかにあくどい事をしてきたが、それでも俺の課す“試練”これで生き延びられない人間たちは、どのみち村長の策略にかかり、死ぬとわかっていた」

「何をする気だ?」

 パルシュは、しっかりとノースをみつめる。

「俺の魔力ももうねえ、“決着”をつけようぜ」

「な、何を……」

 その時、パルシュの脳内に、再びトマスの声が響いた。

“その決闘を受けろ”

“どういうことだ?”

“まだ“見られて”いる……”

“説明をしている暇はない……この戦いのあと、説明をしよう”

 パルシュは剣を構えた。すでにノースの一太刀が、頭上から自分の頭部へ振り下ろされていたからだ。

《ガキィイイン》

 構えた剣でそれをうける。しかし、さすがノース。その威力は魔力がなくとも食らえば一撃で死ぬだろう。

「く……ウッ!!」

《カキィイィン》

 押し切られるかとおもった寸前、パルシュは相手の剣先の魔力の流れをかえて横へ受け流した。体制をくずしてよろけ、一歩下がり態勢を立て直すノース。

「ふむ……やはりそうか」

「?!?」

 ノースは剣先をみる。少し削れており、しかし特段焦る様子もない。

「お前は……ずっと魔力を隠していた……いや、トラウマといってもいいだろう……魔力の貯蓄量こそ多くはないが、お前は……手先の調整やテクニックなら一級だろうな……」

《スッ》

 ノースはいきおいよく剣をひいた、そして真正面に力をこめ、パルシュの腹部に突き刺した。

《シュッ……》

 すさまじい速度で、パルシュは魔力の方向を調整するどころではなかった。そこでパルシュは、腹部から魔力を噴出し、まるで敵の剣をおおうように剣にからませた。

《ズル……》

「ふむ……」

 パルシュは、腹部の傷を見る。剣で防ごうとしたがあまりの速度に間に合わず、魔力だけでかばったため、腹部に剣の切っ先が入り、また衝撃も伝わったため。パルシュは吐血し、腹部からもタラリ、と血がながれた。

「パルシュ……私の体はもう長くないだろう」

 よく見ると、ノースの体を覆っていた影が、魔王の消滅とともに薄くなっている、特に右腕の消耗が激しいようだ。

「この一撃で最後にしよう」

 そう語ると、ノースは背中をむけた。パルシュはその背中をまじまじと見つめていた。





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