老人
村長は心の中でほくそ笑んだ。
(しかし、これは好都合かもしれん、孫のバカがやらかしたせいで”罪”は今発生したことになっておる、このまま私が実験を握ることもできよう……私の罪を浄化できれば……隠し通せば、ならばあやつら……パルシュ、アレポ、そして孫ともども、災害のいざこざに埋めてしまおう)
(やっぱり、俺は役立たずなのか……結局俺の招いた種だ、俺がヘマしなければ、俺が復讐心なんていだかなければ、こんな惨劇が起きなかったかもしれない)
牢を出されて、トマスの後ろについてあるくパルシュ。トマスは一言も発せず、彼を村へと向かわせる。村へつくと村人たちにとりかこまれる。
「パルシュだ」
「パルシュ!!」
「生きていたか」
「まさか、あのノースがあんなことをするなんてな、よかった、お前もひどいめにあわなくて」
「それって、どういう」
パルシュが尋ねると村人はいった。
「あいつ、若い冒険者見習いを束ねて、騙しては金を巻き上げて、ダンジョンの奥地に捨てるという事をくりかえしていたらしいんだ、村には奴を信じる若者はおおい、多くの人間が彼の犠牲になったということだ」
「……」
パルシュは、奴の残虐さをしっていた。けれど今はそれより、彼女の、アレポの状態が気になる。村人たちにそれを訪ねようと、口を開こうとした瞬間だった。トマスが一歩前にでた。
「私は“ギフトマン”だ……警告しにきた……この村の“処罰”が決まった……罪状は“災禍”の中で露わになるだろう」
とたんにざわめきだす村人。パルシュは呆然として様子を見守っていた。村人たちの一人に話を聞こうとする、と、彼は答えた。
「ギフトマン……それは子供のおとぎ話じゃない……“魔王”に挑むものたちの“罪”を裁く者の事だ、それは、いい話なんかじゃない、英雄、勇者にふさわしくないものを裁き、断罪し、命を奪うものの名だ」
パルシュは、トマスをみる。トマスは、不敵な笑みを浮かべていた。
「心あたりがあるのか?パルシュ……だがもう、君の大事な人も、この“災”のなかにある、過去からは、逃げられないのだ」
パルシュは、頭の中に、父の死がフラッシュバックする。そして父を助けられなかった時の記憶がよみがえり、頭を抱えて、うめき、うずくまるのだった。
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