ウバ族
ふと、ルアンスが周囲を見渡すと、黒い霧が立ち込めている。村長は、うなだれている。そして一言はなった。
「終わりだ」
アレポは、腕から出血をして、手を抑えている。
「間違った儀式の方法をした、取り決めとも違う……来るぞ……ウバ族が」
ウバ族は、魔力を吸い、死肉さえむさぼるともいわれる魔族で、凶兆にむらがり、災厄を好む。そんな事はノースも知っている。
「おい、どういうことだ……俺は儀式通りやったぞ……」
「お前にはまだ早かったのだ……儀式は血の刻印をつけたものがやらなければならない」
「何だ……それは」
「ウバ族の承認だ」
「おい、じじい、どういう事だ!!ウバ族は忌み嫌われていて、俺たちと関係を断っているのではないのか!!」
「村長の重荷が、お前にもいずれわかるときがくるはずだった、もう終わりだ、ウバ族は血を好む、始まるぞ、殺戮が」
「殺戮?どういうことだ、ウバ族の風習はすでに変わったはずじゃ、それに……奴らハイエナのハズだ、災厄の前に姿を現すことなんて……」
「お前はまだ若くしらない、何もしらない、古きしきたりがどれほど重要なことか、そして、いかにして魔王が封じられたかを、何も、知りはしないのだ」
「キュウゥウウウオオオオオオオオオン!!」
突如、耳をつんざくような声をきく。人々はその雄たけびの出どころをしっている。そう。それこそがウバ族の鳴き声。
「キュウウオオオオン!!」
「じじい、おい、じじい!!」
ノースが振り返ると、いつのまにやら村長は縄を付き人にほどかれ、逃走を図っているようだった。
「じ……なんとか……」
またふりかえると、目の前に恐ろしい光景がひろがっていた。血がとびちり、村人たちや、若者たちが喉や手首や急所を引き裂かれている。すさまじい流血と、話に聞くウバ族の姿、目は赤く血走り、口は嘴をもち犬の様であり、顔はサルのようで、その上皮膚はごつごつとして黒く、体毛もまた黒い。
「ウ……バ……族」
ふと、自分の傍に彼女―アレポがおらず椅子ごといなくなっていることに気づく、みるとアレポは数人のウバ族に椅子ごともちあげられ、どこかへ運ばれているようだった。
「くそ、だめか」
ふと振り返り、彼はルアンスとイベラに叫んだ。
「仕方ねえ!!お前らはにげろ!!!」
「でも、お前は!!」
とルアンスが尋ねる。
「俺は、ここでこいつらを食い止める!!!」
「でも!!」
イベラが叫びかけると、ノースはいった。
「有能なお前らをこんなところで死なせはしない、こうなりゃ、村長をどうにかして、このままこの村をでるぞ、ひとまず生き延びろ!!わかったな!!」
そういうと二人は頷き、その場をさっていった。
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