第15話

 今日は王家主催のパーティーが開催される日だ。


 初めてロカルド様とアゼリア様に会った日から数日後、王家から招待状が届いた。


 どうやら全ての貴族家に招待状が届いたようだが、なぜかエリザとリュシアン、そして私には個人として招待状が届いた。


 この状況から察するに王太子かそれとも王家自体が何かを企てているのであろうという結論に至った。


 おそらく私達三人に何かの罰を与えるためだろう。


 王家主催のパーティーへの招待は断ることが難しい。


 どうやらそういった不文律が昔からあるらしい。


 パーティーが開かれるのは今から一月後だ。


 あちらが何か仕掛けてくるのであればこちらもこのパーティーを利用して仕掛けるつもりだと、ロカルド様とルシウスが楽しそうに話していた。


 にこやかに会話していたが内容はとてもにこやかにはなれない内容ではあったが。


 ちなみにこの間、ルシウスとアゼリア様の話し合い?があったようで、その話し合いの後にルシウスと二人で話したら「呼び捨てで呼んでほしい」「オルガと呼びたい」と言われたのだ。


 突然のことで驚きはしたが嫌ではなかったし、むしろ今までより距離が近づいた気がして嬉しくなった。


 それからお互いを呼び捨てで呼ぶようになったのだ。




 パーティーまでの一月の間、私とエリザはいつも通り学園に通っていた。


 帰宅後や休日は結界を発動させる練習を、夜はフェニ様に魔力を全部分けてあげてから気絶して眠るという生活を送っていた。


 フェニ様は『あと少しだ』と言っていたので近いうちに力が戻るかもしれない。


 そうするとフェニ様は私の側から離れていってしまうのだろうか。


 いつも一緒にいるのが当たり前になっていたのでさみしくなる。


 あのモフモフがもう堪能できないのかと思うとすごく残念だ。


 ロカルド様やルシウスもなにやら忙しそうにしていたし、アゼリア様は病気が完治したのは秘密にしているので手紙でのやり取りを頻繁に行っていたようだ。





 そうしてあっという間にパーティー当日になった。


 今日まで王太子からの接触はなかったが一体何を企てているのだろうかと少し不安になっているとエリザに声をかけられた。



「オルガ大丈夫?」


「うん」


「顔に不安だって書いてあるわよ?」


「…えへへ、エリザに嘘は吐けないね」


「オルガは嘘を吐くのが下手なのよ」


「えっ、ほんと!?」


「ふふっ、気づいてなかったのね。でもオルガはそのままでいてほしいから今のは忘れてくれる?」


「わ、忘れないもんね!」


「そう?それは残念ね」



 エリザはちっとも残念じゃなさそうな顔で笑っている。


 こうして話しているとさっきまでの不安が消えていることに気づいた。



「…エリザありがとう。もう大丈夫!」


「それならよかったわ。今日はお父様もお母様もお兄様もみんなついているし聖獣様だっていらっしゃるわ。もちろん私も一緒よ」


「そうだね。私達がついているから心配はいらないよ。それにほとんどの貴族が私達の味方だからね」



 ルシウスがやって来て他の貴族も味方だということを教えてくれた。


 ちなみに味方ではないのは側妃の生家である男爵家くらいだけらしい。



 (だから全部の貴族じゃなくてほとんどの貴族なんだね。…それにしても今日のルシウスはいつもよりまぶしく感じるよ。衣装のせいかな?)



 私はぼーっとルシウスを見つめていたようで



「オ、オルガ。そんなに見られるとさすがに私も恥ずかしい」


「っ!?ご、ごめんなさいっ!なんだかルシウスがいつもと違って見えたから…」


「似合ってないかな?」


「ううん!すごく似合ってる!」


「ありがとう。オルガもそのドレスすごく似合っているよ」


「あ、ありがとう…」



 なんだか照れ臭くなってしまったが今日の私はドレス姿だ。さすがにパーティーに制服や私服で行くわけには行かないので、招待状が届いてすぐにドレスを作ってもらったのだ。


 エリザも気合いを入れるために新しいドレスを作ったがとてもよく似合っている。


 ここぞという時に着るドレスの色は自分の魔力と同じ色を選ぶそうだ。


 なのでエリザは風魔力の色である緑色のドレスを着ている。


 そして私は聖魔力の色である白のドレスを着ている。


 ちなみにこの世界では白のドレスと結婚式は関係ないのだが、前世の記憶を持つ私はどうしてもウェディングドレスを連想してしまう。



「本当に似合っているわ」


「あぁ、そうだな」



 どうやらロカルド様とアゼリア様も準備が終わったようだ。


 お二人はお揃いのデザインの衣装を着ているので本当に仲がいいことがうかがえる。



「お二人とも素敵です!」


「うふふ、ありがとう」


「みんな準備できたな。今日のパーティーは何が起こるか分からないが心配することはない。きっと全てがうまくいくだろう。エリーとオルガ君は私達の側から離れないようにな」


「「はい」」


「よし、それでは行こうか」



 私達は馬車に乗り込みパーティー会場である王城へと向かうのだった。

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