押しボタン(651字)

最近、怖い世の中になった。


国が笑うことは健康にいいということで、全国笑顔増進計画というのを推し進めている。


計画自体はいいのだが、先週から笑顔法えがおほうが施行したせいで、道路のあちこちに押しボタンが設置されるようになったのだ。


この押しボタン、信号機とかについているボタンじゃなく、クイズとかに答えるときに使う方の押しボタンなのだ。


人はボタンがあるとついつい押してしまう習性を利用したみたいだが、いざ押してしまうと何が起きるかわからないのだ!


一応、国はランダムで面白いことが起こるので、その場面に遭遇したら思う存分笑ってくださいと報道されているがSNSには、落し穴に落ちた、タライが頭に落ちてきたと言ったものから、中には、昨日から友人が失踪したと怖いものまである。


この法律が悪いところは、押しボタンに一定の確率で当たりがあるからだ。

当たりには、一億円当たったとか、三泊四日の旅行が当たったなどがあるみたいだ。


今、目の前にもボタンを押そうとしている女子高生二人組がいる。

「何があたるかなー」と2人で笑いながらボタンを押してしまった。


『ピコーン、おめでとうございます!当たりー!』

「やったー、何が当たったのかな?」と言っている内に、2人とも強い光とともに一瞬にして消えてしまった。


うわっ!やはり失踪するって本当だった!と思わず後退りしたら、誰かにぶつかってしまった。


【見ちゃいましたね?】と見知らぬ女性が私の肩に手を置いてきた。


「うわぁぁー」と叫び声が近所に響き渡った。


その後、彼が行方不明になったのは言うまでもない。







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