🥚が王子?王子が🥚?

姫宮未調

ヒゲたまご王国は今日も平和です

あるところに、王子だけど点をつけて🥚と呼ばれる王子がいます。(現在進行形)

国民から他国民、果ては放浪者まで出入りする平和の概念のような国ですから、王子の頭の中もさぞかし平和でしょう。(たぶん、きっと、めいびー)

この国の特徴は、辺り構わず皆が気ままに歌を、思い思いの形で歌うこと。

(聞き専という歌わない民もいるよ)

そんな中、当の王子はというと───。


「歌わないわよね」

「歌ったらレアだね」

「え? 待って? あたしまだ聞いたことない! 」

「国風ガン無視なんて日常だぜ? 」

「興はいつ乗るのやら……」


と、皆さんは言います。

王子は気にも止めず飄々としています。


「みんな、愛してるよー♡ 」


_| ̄|○、;'.・ オェェェェェ

_| ̄|○、;'.・ オェェェェェ;'.・ .○| ̄|_

オェェェェェ;'.・ .○| ̄|_


今日も全力で愛されていますね。


果たして王子は歌が上手いのか。

皆さんにインタビューしてみましょう。


「え? 知らない」

「王子? 上手かったような……」

「いやいや、めちゃくちゃうまいよ? 」

「うまいんだけどさ……」


最後に口を揃えて言います。


『あの人、喋る方が好きだから』


とってもおしゃべりな王子のようです。

では人柄について聞いてみましょう。


「王子はねぇ、とっても優しいですよ。なにせこの前ね……」


おばあさんがのんびりと語るお話。

ある日、重い荷物をえっちらおっちら運んでいたそうな。

ふっと背中が軽くなって振り返ると、王子がいました。


「まぁまぁ、王子さま。申し訳ない」

「えー、俺がやりたいだけだよ。ワガママだから嫌だったら言ってね」


と徒歩で現れたそうです。

お供の伯爵も連れずに。


「いやだなんて、滅相もない」


おばあさん宅まで王子の一方通行なマシンガントークを聞かされたそうな。


「ここなの? じゃ、置いとくね」

「ありがとうございました」


と頭を下げると。


「俺がしたいことしたんだからさ、頭下げないでよ。いつもひとりで下向いてたら地面しか見えないじゃん。たまには上を見て歩こうよ。俺の国の空、めちゃくちゃ綺麗なんだからさ」


そう言って何処かへ歩いていったそうです。


「ただ優しいと感謝されるのは照れくさいみたいでね。いつも余計なお話をされて相殺して行くんですよ。お話、楽しいのですけど……長くて年寄りには辛いのです」


道中のお話は全く覚えていないそう。

次の方に行きましょう。


「え? 王子ですか? そうですね。優しくて強引な方ですよ」


綺麗なお嬢さん、語弊が生まれる瞬間を期待しちゃいますね。


ある日の夕暮れ、紙袋をいくつも抱えての帰宅中だったそうです。

視界が急に暗くなり振り向くと……。

豪奢な馬車が真後ろに迫っていて、ビックリして荷物を落としてしまったそうです。

馬車がいきなり開き、出てきたのは……王子でした。


「ごめん! 大丈夫?! 荷物いっぱいじゃん。君、ここから結構遠くなかった?! 」


ちょっとヤバい単語が飛び出しました。


「あ、すみません。道塞いでしまって……」

「動かないで! 伯爵! 手頃な袋にいれて運んで! 」

「はいはーい」


手際よく回収し……、馬車に積み込んで行きます。


「え? あの……」

「ほら、君も乗ってよ! 裏通りだったよね? 」


なんで知ってんの?


半ば強引に荷物ごと馬車に連れ込まれました。


「あの、どこか行くご予定では……」

「別にー? 職権乱用で乗り回してるんだから国民乗せても問題なーし! 」


車中、王子の謎の自慢マシンガントークが繰り広げられ、伯爵がこれまた謎の相打ちを打ち、早く降りたい気持ちでいっぱいだったそうです。

着くと伯爵と2人で玄関に荷物を置き、何事も無かったかのようにものすごく軽く挨拶だけ残し、感謝を述べる隙すら与えずに去っていったそうです。


みな、口々に言います。


『口から生まれた説濃厚』

『優しい』

『かっこいい(モドキ)』

『ウザイ』

『嫌い』

『面白い』

『好き』


いじり愛を楽しむ万能王子。


「みんな俺の事好きすぎじゃん♡ 」


『え、キライ』


今日も王子は愛されています。


……真夜中の王子目撃情報のタレコミが入ってきました。


「酔っ払いではなかったよ」

「鬼絡みしてきた」

「伯爵帰宅してたよね」

「流石にみんなで帰れって言ったんだけどね」

「疲れてるなら寝なさいってなるよ」


みな、心配しているようです。


『俺、愛されてるう♡ 』


「「「帰れ」」」


ちょっと疲れた感じだったようです。


「そんなにお城に帰りたくないのかな」

「実際、王子って忙しいはずだよね」

「ウザ絡みしたくなるくらい疲れてるのかも」

「お城以外の人間大好き過ぎる」


口々に王子にはナイショだよ、と話してくれます。

井戸端会議に巻き込まれました。


「王子って実は真面目だよね」

「伯爵も真面目かもしれない? 」

「たまに【ぐんそう】って呼んでる変な格好した人混ざってるよ」

「『姫』とか隣国の可愛い王子とか来てるよね」

「あ、かっこいいって呼ばれたいんだから可愛いはダメだよ」


みな疲れた感じだけど楽しそうだと言います。


「毎日抜け出して来てるよね」

「王様とか出てこないからここ王国? ってなるけど王子が付け髭クイクイイジイジしながら来るから保たれてる(認識が)」

「髭が本体? ってなるくらい付け髭忘れたときの違和感パない」

「「「わかる」」」

「毎日だから見ないとあのひげ🥚大丈夫かなってなる」

「🥚倒れてないかな、割れてないかなってなる」

「🍳になってないかなとか」


井戸端会議が弄り会場になりました。


「笑わせてくれるから好きだわ」

「お調子者だけど親身よね」

「聖徳太子かってくらい答えてくれる」

「たまに拾い切れなくてめちゃくちゃ謝るとこ、ちゃんとしてて好き」

「何だかんださ、頼み事断れないお人好しなとこあるよね」

「「「わかる」」」

「でもちゃんと考えてるからすごい」

「王子、認知力おばけ」

「「「わかる」」」


褒めてるのナイショだよと再度言われました。


まとめと参りましょう。

私、ですか?

私はただの放浪者に過ぎません。

どこにも属すことが出来ない半端者です。

そんな私にもフレンドリーに話し掛けてくれる王子は人格者であり、でもやはり人間だなと思います。

旅先にも、「たまたま進行方向がおなじだったし、そういえばいるって言ってたなーって思い出して」なんて理由で顔を見せに来てくれました、何度も。

親切を通り越してお人好しなんじゃないかなとも思いました。

王子だけではなく、国民の皆さんも大変親切な方ばかりで。

平和であるための努力も並大抵ではないでしょう。

そんな素敵な居場所が私にも見つかりますようにと切に願うばかりです。


───おっと、私を呼ぶ人がいますね。

取り敢えずついていって見ましょう。

慌ててどうしたんでしょう。


大きな噴水の前に人だかりが出来ています。

何事かと首を傾げていると、みな少し道を開けてくれました。

そこには───。


王子がマイクを持って立っています。


「今日は歌いたい気分だから歌っちゃうよー! 」


みなに囲まれながらニコニコ手を振っています。

こんなにいたのかと思うほどの人が集まってきていました。


実を言うと、何度が歌う場面に遭遇し、聞いたことがありました。

レア度が高い所為か、ワクワクしてしまいますね。

王子は楽しませる天才なのかもしれません。

……本人には内緒ですよ?


例の如く、二曲ほどでお開きになりました。


きっとまた、会いに来てしまうでしょう。

私は面白い人が好きですから。


これにて幕を引かせて頂きます。

また面白い小話が見つかればご報告にあがりたいと思います。



Fin

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🥚が王子?王子が🥚? 姫宮未調 @idumi34

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