②電車とホームの隙間

 ホームの構造上の問題か何かで、電車とホームの隙間が広くなっていることは割とよくある。特にその隙間の広さが顕著な場合は、「電車とホームの隙間が広く空いている箇所がございますので……」とアナウンスされるが、アナウンスがない駅でも、多少なりとも隙間が空いていることが多いように思う。


 電車を降りる時、うっかり視線を足元に持って行ってしまうと、隙間が目に入ってしまって「ヒェッ」となる。

 隙間に何かが居る、などと想像するわけではない。ただ単に、隙間があること自体が怖い。そのちょっとした空間から見える景色も駄目だし、うっかり身体の一部が嵌りはしないかという不安もある。

 うっかり電車とホームの隙間を見て、そんなふうに怖くなってしまった時は、実際にはそこまでする必要がなくても、少し勢いを付けて跳ぶようにして電車を降りるようにしている。

 ホームに降りてしまえばもう、大丈夫。万が一にも隙間に嵌ってしまうことはないから。


 ――その、はずなのだが。


 私は、急いでいた時に地元近くの乗換駅で快速電車に駆け込み乗車をしようとして、片足が電車とホームの間に挟まってしまったことがある。その時は目の前しか見ておらず、まさか脚一本嵌まるほどの隙間があるとは思っていなかった。

 なにやら周りの人には驚かれるやら心配されるやらで、大変に恥ずかしかった。なお、挟んだ足が抜けなくなるような事態に陥ることはなかったし、精々痣程度で、怪我といえるほどの怪我をしなかったのは不幸中の幸いである。けれどまぁ――割と本気で痛かったことは覚えている。


 こうして一度痛い目を見たわけだが、そのせいで電車に乗れなくなったりはしていない。もしそんなことになっていたら、日常生活に支障をきたしていたことだろう。電車に乗れない身体にならなくて、良かった良かった。

 

 実は、痛い目に遭ったことでどうしてもできなくなったこともあるのだが、それはまた別の機会に。

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