ホラー好きでも、怖いものはある
金糸雀
①高い場所
――自分の身体は今、床やらなんやらの構造物を「ない」ものとしたならば、地に足付くところになく、宙に浮いていることになる――
そう考えてしまうと、もう駄目だ。
高層階で働くこと自体、あまり嬉しくない。
たまに窓拭きの人が降りてくるのを見るだけで「ピエッ」となる。怖い。無理。ああいうのは、高い場所が平気な人が仕事として選んでやってるのかな……
観覧車に乗ると、ゴンドラが支えを失って落下すると死ぬだろうし、そもそもこのゴンドラを隔てて随分高いところにいると考えてしまうから無理。
正直なところ、できるだけ乗りたくない。
ロープウェイは、速度が結構出る乗り物だし、ゴンドラから、凄い速度で斜面を上昇、あるいは下降するさまが見えてしまう。なにこれ怖い。
函館山ロープウェイには、覚えている限り一度だけ乗ったことがあるが、一度で結構。
というか函館山なんて三百メートルそこそこの平たい山だ。登りたければ徒歩で充分。地元民はお散歩感覚で函館山に入るぞ。鹿が出るらしい今はどうか知らないが。
飛行機、これは言わずもがなである。
堅牢な構造であることを頭では理解しているつもりだが、やはり、この床一枚隔てたら数千メートル以上の高さに浮いていることになるではないかと思ってしまう。その事実自体が猛烈に恐ろしい。
「墜ちたら死ぬじゃん!」
と、声を大にして叫びたい。
私は北海道出身だが、新幹線が新函館北斗まで開通してからは、向こうに行く時は新幹線を使っている。新幹線だって走行中に脱線でもしたら大惨事では? という懸念からは目を逸らしつつ。
私の場合は、初めて乗った飛行機が少し揺れて、それが怖くて飛行機が苦手になってしまった面はあると思う。
確かあれは初めて上京した時で、父も同乗していたが「あぁ、ちょっと揺れてるな」くらいのリアクションで呑気に煙草を吸っていたので、飛行機の揺れの度合いとしては大したことのない部類だった可能性が高い気はするのだが。
それでも怖かったのだから仕方ない。
――完全に余談だが、飛行機の中で煙草を吸えた時代もあったって、今考えるとびっくりな話だなぁ――
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