第29話沢村美由紀に新しい出会い

沢村美由紀です。

愛しの瞳君と里香先輩の熱々は、もはや学園内でも、区民オーケストラでも公認。

(悔しいけれど、私は、その他大勢です)

(指をくわえて眺めているだけです)

(涙は・・・もう枯れました)


それで、今回は区民オケの話です。

瞳君は、ここでもピアノを弾くことになりました。

(都の教育委員の杉沢真衣さんの強いプッシュがあったようです)

(瞳君は、泣きそうな顔で、ダメ出ししたけど、里香先輩に説得された)

(里香先輩の話だけは、聞くので)


曲は、シューベルトの名曲。

ピアノ五重奏曲「ます」です。

音楽ホールとは別の部屋で練習をしています。

(瞳君は、スターウォーズを吹きたかったらしい)


安心なのは、別室のメンバーが、全員おじさん、おばさん、ということ。

(若い女の子には、瞳君を見せたくないので・・・理由わかりますよね?)


練習が終わって来てホールに戻って来たので、瞳君に聞きました。

「どう?シューベルトは?」


瞳君は微妙な顔です。

「年寄りばかりで、テンポが遅い」

「今度、変えちゃおうかな」

「キレキレのシューベルトが好き」


「波風立てないほうがいいと思うよ」

(私は、心配になった)


瞳君は、笑いました。(珍しく私に)

「ますは、波風立てるよ、魚だから」

(・・・変な返しだなあ)


それはともかく、練習が終わると、いつもファミレスで和気あいあいです。

(特に、こういうのが好きみたい、区民オケの人たち)


年齢、性別、職業関係なく、音楽を語り合っています。

(時々、年を取った愚痴、会社の愚痴・・・旦那様の愚痴も)

(聞いているだけで、面白いです)


あ・・・私にも、声がかかりました。

フルートの三崎さんからです。(近くのM大付属高校の2年生、美男、瞳君には負けるけど)

「沢村さん、最近、いい音出しているね」

「すごく合わせやすいよ」


「え・・・あ・・・ありがとうございます」(やばい!嚙んじゃった)


「区民オケ慣れた?何でも聞いて」(実にやさしい、瞳君の10倍やさしい)


「はい、ありがとうございます」

「まだまだ未熟者です」(私でも、これくらいは言えるよ)


「今、15歳?」


「はい、まだ」(誕生日は、遠い、11月だから)


「妹と同じか・・・」(妹さんがいるのか・・・こういうお兄さんが欲しいな)


そんな話をしていると、ファゴットの女の子(三木さん、高校生、近くの女子高)から声がかかりました。

「ねえ美由紀ちゃん、木管アンサンブルのメンバーに入って欲しいの」

「学校違っても、アンサンブルコンクール出られるはず」


私は、すぐにOKです。

「うん、やりたい!楽しそう!」


私、美由紀は、瞳君は無理だけど、別の出会いがありそうで、ワクワクして来ました。

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