第15話坂田里香の音楽部リポート 坂田里香VS沢村美由紀①

坂田里香です。

石川先生の問題が解決しました。

(石川先生は解雇されました)

(学園長が厳しい態度を貫き、自主都合辞職を認めず、解雇としたので)

それと、石川先生の「腰ぎんちゃく」だったコンマスの佐々木先輩も、音楽部を去りました。

(旧音楽部から、総スカンになっていたので)

(彼も石川先生の後ろ盾がないので、旧部員の前に顔を出せません)


今は、学園長が配慮して、次の「新音楽部」の結成準備中です。

次の指導者決定までの学内での練習は自主練だけです。

(音楽室、屋上の使用は許可されていますので)


それまでの演奏機会は、区民オーケストラです。

学園長は、「積極的に参加を、地域と交流を」、と背中を押してくれました。

確かに、高校生だけでなくて、いろんな年代の、いろんな職業の人と演奏するのは、本当に楽しいです。

いろいろ知らなかった技術もフランクに教えてくれますし、営業の人から新製品の化粧品をもらったり、商店街の人から割引券ももらいました。(趣味と実益かも)


さて、そんな中、私は、ちょっと不安もあります。

それは、一年生の沢村美由紀です。

とにかく、私の瞳君(他の女には、渡さないよ)に、喧嘩腰に突っかかるのです。


「瞳君、ぼーっとしない!掃除手伝って!」

(音楽室に入る前から)

「次の先生が決まらないからって、練習サボらないでよ」

(まだ楽器のケースを開けていないのに)

「お母さんが名手だからといって、威張らないでよ!」

(これは酷い、威張っていないのに、むしろ謙虚なのに)


瞳君に聞くと

「幼馴染で、昔から突っかかって来た」

「突っかかって来る理由は不明」

「ただ、文句だけを言って来る」

「だから、大嫌い」

「顏も見たくない、声も聞きたくない」


そんなことが心配だったので、私は沢村美由紀に直接聞きました。

「沢村さん、何で瞳君に突っかかるの?」

「他の人も言っていたし、私も思うよ」

「喧嘩腰だもの」

「見ていて、聞いていて、気分良くない」


沢村美由紀は下を向きました。

「瞳君が、すごく気になるんです」

「昔から、瞳君を思うと、夜も眠れなくなるんです」

「でも、瞳君を前にすると、つい・・・焦って」

「やさしい言葉をかけたいけれど、逆になるんです」

「もう・・・嫌・・・こんな性格」

(ここで潤むなら、そうならないように努力すればいいのに)

(でも、長い期間、治らないのだから、重症なのかもしれない)


私は、諭しました。

「瞳君が嫌がっているのは事実」

「もちろん、私も、他の人も」

「治らないなら、接触を避けて欲しいの」

「せっかく、次の音楽部が出来る方向に向かっているの」

「気分が悪いまま、発足させたくないから」

(事実上の接触禁止令です)

(瞳君のため、みんなのため、そして私のため)


でも、沢村美由紀は抵抗して来るのです。

「瞳君、里香先輩が好きなんですよね」

「それも悔しい」

「里香先輩は、どうなんです?」


私は、隠しません。

「私も、瞳君が大好きなの」

「誰にも渡さないよ」

「もちろん、あなたにも」

(負ける気はないから)


沢村美由紀は、口が「への字」。

「私も負けません」(???)


そのまま、瞳君に向かって歩いて行くのです。(おい!何するの?)

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