第12話瞳の母、美佳の助け

私は、瞳の母で本田美佳と申します。

今日の夕方、(元音楽部の)トランペットパート全員を家に迎えました。

それぞれの自己紹介をキチンと受けた後、パートリーダーの翔太君から、「事情」を聞き、謝罪を受けました。

「僕が不用意なことをして、瞳君を傷つけてしまいました」

「本当に申し訳ありません」

瞳以外の、トランペットパート全員が、頭を下げました。


でも、あの石川孝雄なら、ありそうなことなのです。

とにかく、腕(音楽)の良し悪しより、年次、年齢を重視するタイプですから。

現役時代も、そんな感じ。

自分より後輩のほうが上手で、それで席をどんどん、後ろに下げられた。

しかし、プライドだけは高い(腕は低いけれど)彼は、それに納得出来なかった。

結局、最後列に下げられ、腹を立ててオケを辞めた。

(実質は解雇です、出来る後輩に嫉妬して暴力を振るっていたから、肉体でも、言葉でも)

(彼は自分から辞めたと、言い張ったけれど、誰も認めません)

(オケは新聞沙汰、オケの名誉を考えて警察に言わなかった)


でも、瞳も人生経験の一つかな、と思います。

世の中には、そういう人もいる、を教わったのですから。

(もちろん、瞳も、私も悔しいけれど)

(一筋縄ではいかないのが人生です)


でも、謝りに来たトランペットパートも不憫です。

「今後、どうするの?」


しかし、予想通り、全員が下を向きました。

(つまり、トランペットは吹きたい、でも、吹く場所がない)


提案をしました。

「近所に、区民オケの人がいるの」

「私の後輩で、都の教育委員なの」

「話をしてみようか?そこでよければ」

「ついでに、音楽部の事情も説明しなさい」

「そんなに大量の部員が辞める先生も異常だから」

(まさか、母の私が乗り込むのも、スマートではないから)


トランペットパート全員の顏が輝きました。

「はい、吹けるなら、そこで」(翔太君)

「聴きに行ったことがあります」(華奈さん)

「大人も多いですね、楽しそう」(敏生君)

「さすが、美佳師匠」(これは里香さん、もう弟子です)


彼女(区民オケ:都の教育委員)を呼び出しました。

「初めまして、区民オケの杉沢真衣です」

「都の教育委員もしています」


(そこで、トランペットパートも、自己紹介をした)


杉沢真衣

「まずはオケの話」

「区民オケなので、サラリーマンから、高齢者まで、職業と年齢は、様々」

「特にサラリーマンは、仕事の関係で欠席することが多い」

「練習に困ることもあるから、助かるかな」

「高齢者は、どうしても高音が出ない、音量も減って来る」

「君たちが、合間のエキストラとか、補助とか、してもらうと助かるかな」

「一曲だけ、全て任せてもいいかな」

「夏に区民音楽祭に出るの」


翔太君(元パートリーダー)

「はい、お任せ、お願いします」

華奈ちゃん

「ワクワクして来ました」

敏生君

「通用するかな、練習します」

里香さん

「師匠のおかげです、うれしいです」


区民オケの一旦話がまとまった後、杉沢真衣が、高校の音楽部の事情聴取になった。

(私が、その前に里香さんから聞いて、伝えてあったことの再確認になる)


杉沢真衣は、話を聞いて厳しい顔になった

「まあ、話を聞く限り、酷過ぎるかな」

「完全なパワハラ、モラハラ事例」

「教育者として、あるまじき行為です」

「教育委員長に報告対象案件です」

「明日、訪問して、校長に面会を求めます」


トランペットパート全員は、一様にホッとした顔になっています。

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