ドラゴンブートキャンプ

「な、何をする!?」

「全ての原因がお前にあるとわかった以上、そのままにするはずないだろう? お前の呪いの原因、俺が解いてやるよ」

「ほ、本当にそんなことができるのか?」



 ようやく俺の話を聞いてくれるようになった。

 よほど、今の状態が苦しかったのだろう。

 もちろんただの食べ過ぎであるために、しばらく何も食わなかったら元の状態に戻るはず。


 でもそれだと再びこいつは食べ過ぎて、その結果呪いだと騒ぎ立てて街を滅ぼしに来るだろう。

 はた迷惑この上ない。


 そのためにもう食べ過ぎにならないくらい体を絞らせるつもりだ。



「できる! ただこれは長く苦しい試練となる。それでもやるつもりはあるか?」



 俺の迫力に黒龍王は思わず息をのんでいた。

 しかし、満を持して頷く。



「頼む。我ならどのような試練も耐えてみせよう」



 黒龍王はやる気を見せている。

 それだけこの食べ過ぎが辛いらしい。


 それなら徹底的に鍛えてやるとしよう。


 俺はにやりと微笑むと黒龍王は解答を早まったか、と後悔してしまうのだった。




       ◇ ◇ ◇




「さぁ、走れ! 走るんだ!!」

「ま、待つのじゃ。せ、せめて飛ばせて……」

「口答えをするんじゃない! 呪いを解きたくないのか!?」

「そ、それは解きたいがそれとこれがいったい何の関係が……」

「だから口答えするな! あと十周追加だ!」

「ど、どこを回るのじゃ?」



 まともに走っていないにも関わらず既に息が上がりまくっている黒龍王。


 これはなかなかに時間がかかりそうだった。



「そ、そろそろ我はお腹が減ったのじゃ」

「まだ朝だろ。せめて昼まで待て。食事は用意させるから」

「そんなに待つと飢えてしまうのじゃ。朝は三食食わないと死んでしまうのじゃ」



 一瞬それが普通のように思えたが、よく聞くとまるで違う。



「さて、そんな戯言が言えないように徹底的に叩き潰すとするか」

「ま、待つのじゃ。死ぬ。死んでしまうのじゃ」

「大丈夫だ。もし死んでしまっても……」

「ま、まさかあの伝説の蘇生魔法を?」

「その時は骨まで残さずに美味しく食ってくれる奴がいるから安心しろ」

「それだと我は死んだままなのじゃ!!」

「死んでしまったのだから、それは普通だろ? そのまま放置するのが勿体無いから有効活用するだけで――」

「迂闊に死んでいられないのじゃ」

「ほらっ、休んでる暇はないぞ。早く走れ」

「くっ、我は悪魔に魂を売ってしまったか……」




 泣く泣く黒龍王は走り出していた。

 すると、攻撃が止んだことを不思議に思ったフィーたちがやってくる。



「どういう状況なの?」

「食いすぎて太った黒龍王がいたから無理やり痩せさせているところだ」

「拷問じゃなかったの?」

「ただ運動させてるだけだぞ? あっ、そうだ。フィーにしか頼まないのだがいいか?」

「もちろんなの。何をしたらいいの?」

「あいつの昼食を用意しないといけないんだが――」

「フィーが作っても良いの? また前みたいな結果になりそうなの」



 確かに何もなしに好きに作ると物体Xを生み出してしまうだろう。

 でも普通にレシピがあれば問題ないだろうし、そもそも下手なアレンジを加えようとしなければいけるはず。


 それに物体Xはそれはそれで痩せそうではあるので、どんな結果になっても問題はなかった。



「大丈夫だ。俺が言った通りに作ってくれるだけで良いから」

「わかったの。頑張るの!」



 グッと気合を入れるフィーに今ある素材から作れそうなものを考え、指示しておく。




       ◇ ◇ ◇




 それから時間が過ぎて、ようやく昼前になると黒龍王は力尽きて倒れていた。



「よ、ようやくご飯なのじゃ」

「全く、食い意地だけは一人前だな」

「だ、誰のせいじゃ」

「お前のせいだな」



 食い過ぎは一切俺が原因ではないからな。

 ちゃんと自分で注意していたらこんなことにはならなかったはずだ。



「どう見てもお主のせいなのじゃ。で、でもとりあえず飯じゃ。特盛肉食べ放題じゃ」

「いや、食事もこちらで用意している。精進料理だ」

「いかにも腹が膨れなさそうな名前なのじゃ。いやじゃいやじゃ。我は肉を食うのじゃ」



 だだを兼ね始める黒狼王。

 その姿はまるで子供のようである。



「そこまでいうなら俺は退かせてもらうがいいか? お前の呪いは治らないが」

「うぐっ、わ、わかったのじゃ。呪いが治るまでは我慢してやるのじゃ」

「よし、良い返事だ。安心しろ。別に毒を食わせるわけじゃないからな」



 フィーに昼食が乗った皿を持ってきてもらう。

 ただしっかりと指示をしたはずなのになぜかそこには物体Xがいた。


 それを怪訝そうな表情で見る黒龍王。



「どこからどう見ても毒であろう?」

「大丈夫だ。食ってみればわかる」



 そういうと黒龍王の大きな口に無理やり物体Xを流し込む。



「や、やめ……。ぐあぁぁぁぁ……」



 黒龍王は悲鳴をあげて、そのまま目を回して倒れてしまった――。

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