エミリナの策?
ユーリから頼まれて早速フィーはエミリナの側で気配を消していた。
「久々にユーリ様に頼まれたの。頑張るの!」
ただエミリナにはなにも怪しいところは見受けられない。
常に笑顔を振りまいて、嫌な顔一つ見せずに難しい話にもしっかりと受け答えをしていた。
「ユーリ様とエルゥ様のご婚約話だけではなくて、こうして聖女様にも来ていただけるなんてありがたいです」
「いえいえ、私なんてまだまだ多少聖魔法が使えるだけの小娘ですよ」
「その聖魔法が素晴らしいのです。我が国にも聖女様のように素晴らしい方がおられましたら……」
「エルゥ様がおられるではないですか」
難しい話をしているようで真剣に聞いているとフィーは眠くなりそうだった。
それでもユーリの頼みだからと、フィーは頑張って、じっとその様子を伺っていた。
「……何もなかったの」
そんなにすぐボロを出すなら、わざわざフィーに頼み事をしてこない。
これは結構な長期戦になるかもしれない。
もしかして、ユーリ様はフィーを遠ざけようとしてこの依頼を出したの?
ううん、そんなことは無いはずなの。
確かに夜中も寝ずに魔道具が作れると喜んでいる姿は想像できる。
それでも今まで彼の依頼で無駄なことはあっただろうか?
全てが何かしらに繋がるように指示をしていた。今回も自分はわからないだけでおそらく何かしらの理由につながるのだろう。
「よし、頑張るの!」
エミリナが再び移動するのを見て、フィーはその後を追いかける。
彼女が次に向かったのは獣王の娘、エルゥの所だった。
「上手くいって良かったですね」
「エミリナ様が協力してくださったおかげです」
楽しげに二人で笑い合っている。
どうやら二人は何か策をめぐらせて、それが上手くいったということなのだろう。
このタイミングでの策なんて婚約のことしか思いつかない。
もしかしてユーリ様、騙されたの?
急にフィーは不安に思えてくる。
ただそれは杞憂だということがすぐにわかる。
「ユーリ様の目標は国家としての独立。そして、多種族共存国家を作ることですしね。その第一歩、お父様の説得が最難関でしたけど、お父様もユーリ様を気に入ってくれたみたいです」
「フィーちゃんには悪いけど、やっぱり正妻にはそれなりの地位が必要ですからね。他国に侮られないためにも」
「フィー様、怒るでしょうか? ずっとユーリ様に付き従ってるお方ですし……」
不安そうな表情を浮かべるエルゥ。
もしかしたらユーリ様、このことを気にしてエミリナ様を見張るように言ったの?
確かにこの悩みはフィーとエルゥ、二人で話し合うしか解決しない。
でもそれなら最初からエルゥ様を見張るように言えば良かったのではないだろうか?
「フィーにも国として独立しようとしてることを知らせるため?」
一領主としてならフィーのようにひたすら付き人として付き添うだけで問題がなかった。
でも、国家となるともっと別のことが要求されるようになる。
それをさり気なく教えようとしたのかもしれない。
「それならフィーももっと頑張らないとなの!」
やる気を見せるフィーだったが同然ながらそんなことを教えようとしたわけではない。
より国王らしくさせようとするフィーの気合いはユーリからしたら良い迷惑だったのだが、それに気づかずにフィーは気配を表してエルゥと話をしに行くのだった。
人知れずミイラ取りがミイラになった瞬間だった。
◇ ◇ ◇
隠密行動を頼んでいたはずのフィーがいつの間にかエミリナやエルゥたちと楽しげに話をしていた。
でも、二人を知ってるフィーからしたら逆にその方が情報を得ることができるかもしれない。
俺の頼み以上のことをしてくれるようになったことを嬉しく思いつつ、こっそりと隠れて魔石っぽい石に魔力を込めていた。
故賢者の塔があった場所で見つけた妙に綺麗な石なのだが、不思議なことにいくら魔力を込めても溜まりきらない、ずっと魔力を使い続けられるという不思議な石だった。
さすがの俺でもここで魔石に魔力を込めて万が一でも暴発でもさせようものなら国家転覆を狙ったとして即処刑されてしまう。
原作にはないストーリーを進むことが確定するが、俺が処刑されてしまっては元の子もない。
仕方ないので特訓がてらこの
するとそれに興味を持ったのか、ルナが不思議そうに聞いてくる。
「それ、何なの?」
「これか? これはただの石だな。触ってみるか?」
「危険じゃない?」
「危険はないな」
少なくとも俺の経験上、この石で問題が起こったことはない。
だからこそ気安くその石をルナに渡したのだが、その瞬間に彼女は驚き、その場に膝をついていた。
「あっ……」
「だ、大丈夫か!? な、何があったんだ!?」
「魔力がなくなったの……」
どうやら俺と同じようにルナもこの石に魔力を込めてしまったようだ。
いくらでも魔力を吸い取ってしまうので、ある程度加減が必要なのだ。
それに失敗してしまったら今みたいに一瞬で魔力を吸われかねないのだ。
「少し休んだら回復するな。部屋まで連れて行くか?」
「んっ、お願い」
ある意味、俺のせいではあるので石を回収したあと、ルナを担ぎ部屋まで連れて行く。
もちろんその道中で石に魔力を吸われながら。
正直初めはいいくらいに魔力が消耗してくれていたのだが、気がついたら自然回復量の方が上回ってしまい、何のために魔力を込めているのかわからなくなっている。
そんなことを思っていたとき、突然どこかから大きな音が鳴る。
「な、何が起きたんだ!?」
周囲を確認すると慌ただしく駆け回っている獣人たちの姿が見える。
そして、そんな彼らに紛れるようにフィーが俺たちの方へと向かってくる。
「ユーリ様、大変なの!」
「どうかしたのか?」
「内乱が起こったの!! ここにいたら危険なの」
それを聞き、俺は原作のとある話を思い出す。
原作だとヒュージ獣王国の王はギーシュだった。
その理由は獣王国で内乱が起こりそれによって獣王が命を落とし、内乱を鎮めたギーシュが王に付く、とかいう話だった。
トピックで少し載っていた程度の情報なのでそこまで詳しくは覚えていないが、まさかこのタイミングで起きるものだったとは……。
ギーシュが捕まっている現状だと今獣王になれる人と言えば第二王子レノンになるが……。
さすがに内乱は鎮められないんじゃないか?
確かに策士という前評判である。
でも、体の弱さはいかんともしがたい。
そうなると内乱を鎮める役目は……エルゥになるのか?
ただ、彼女も一人でどうこうできるほどの力は持っていない。
そうなるとこの内乱を鎮めるためには俺たちが力を貸すしかないのだろう。
原作通りに進めるのは癪だが、今回に限って言えばそれで獣王国にも恩を売れるために良い結果になるわけだ。
「よし、フリッツたちを集めてくれ。作戦会議を開きたい」
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