第9話
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ラビック ランクG
特記事項:なし
強制依頼:強制なし
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名刺サイズのギルドカードを見たラビックは、受付嬢に対してある質問をする。
「あの~、このギルドカードの素材と特記事項や強制依頼ってなんですか?」
「このギルドカードは特殊な合金で出来ているらしいですよ。詳しい事は上の人しか知らないそうです。それと、特記事項はその名の通り特別なことを達成した人のギルドカードに刻まれるそうです。たとえば、ある街を襲いにきたドラゴンを1つのパーティーが倒したことで、ドラゴンキラーと刻まれたそうです。最後に強制依頼についてですが、1つの例で言えば魔物や魔獣が大量に発生、または知能の高い個体が集団のリーダーになった場合、近くの街や村を守ってもらうために一定のランクの冒険者に戦うことをギルドが身分を保証する代わりとしてお願いすることです。」
「そうなんだ。でも、その強制依頼をしなかった場合はどうするの?」
「強制依頼は3連続で参加いただけない場合、ギルドからの追放としてランクの初期化を行います。もともとギルドは、自分たちの自由と襲われる街や村を守る事が発足の理由なので現在でもこの強制依頼の制度が残っています。」
「そうなんだ。説明ありがとう。」
(結構しっかりした設定のあるゲームなんだな。人もリアルだし。すごい人工知能でもつんでるのかな?)
話を聞き終わったラビックは受付の左側、冒険者連盟ギルドの入り口から見ると正面にある木製のボードで作られた、依頼掲示板と書かれた場所に向かう。
(あれ?俺ってGランクだからGランクの依頼しか受けちゃだめなのかな?………
まぁいいか。とりあえず依頼を受けるときに聞けば。)
途中で気になったラビックだったが、心のなかでいったん先送りにする。
それしてラビックがGランクの依頼を見ていると、とある依頼に目が止まる。
その依頼は聖ベリア孤児院という場所の清掃のお手伝いだった。
これを見たラビックはふとある考えが浮かんだ。
(俺が、俺たちプレイヤーが死ぬ分にはなんの問題もない。だけど、こんなに周りがリアルで。もし、NPCの彼らが死んだらどうなるんだろうか。)
ラビックが考え出してから数分。
この数分がラビックにとっても短いのに長く感じた不思議な瞬間だったそうだ。
そして、ラビックはある決断をした。
(今いる抑圧された世界でできないことをしよう。周りの視線や嫌がらせだって起きるだろう。だけどゲームなんだから1人でも多くの助けたい人を助けて、次に繋がるようなそんな活動がしたい。)
そんなふうに覚悟が決まったラビックは、他のGランク依頼(薬草採取・落とし物探し・店番・掃除の手伝い・などの雑事)を見ずに1枚の依頼を剥がして受付に持ってきた。受付嬢を探すとラビックから声をかける。
「Gランクなんだけど依頼はどのランクまでならを了承してくれるの?」
「そうですね。GランクでしたらGランクの依頼と少し上のFランクでしたら依頼をお受けすることも可能なのですが、依頼とは、依頼に失敗した際に発生する違約金と言うものがあります。これはギルドでしっかりとしたマニュアルがあるためよほどのことでなければ少額のお金で済むのが大半です。」
「しっかりとした情報をありがとうございます。それで今回受けたい依頼がですねこれなんです。」
ラビックが掲示板から剥がして持ってきた依頼を受付嬢さんに渡す。
すると、受付嬢さんに柔らかい雰囲気が溢れ出していた。
「ラビックくんありがとうございます。ここの孤児院はやんちゃな子が多いので気をつけてお掃除のお手伝いをしてください。」
受付嬢さんは話しながらも必要な書類を集めていく。そして最後に依頼票をラビックに渡し、仕事が終わったら孤児院の方から依頼完了のサインを貰うことを教えて、ラビックを送り出した。
「わかった。行ってきます。」
(そういえば、受付嬢さんの名前ってなんなんだろうな?)
最後に受付嬢の名前が気になったが、すぐに依頼票の裏側を見る。そこにうつされているのは孤児院の周辺と冒険者連盟ギルドからの行き方だった。
特にないかあるわけじゃなく、ラビックは1人で孤児院についた。ここが孤児院だったのなら。すると後ろからシスター服を着た60代の女性が先頭で次に30代と20代女性が現れた。さらに30代と20代の女性の周りに子どもたちがガッツリ張り付いている。
(どう喋ればいいんだろうか。)
ラビックもどうすればいいか迷っていた瞬間、ラビックは少し前の言葉を思い出した。
(今いる抑圧された世界でできないことをしよう。周りの視線や嫌がらせだって起きるだろう。だけどゲームなんだから1人でも多くの助けたい人を助けて、次に繋がるようなそんな活動がしたい。)
悩みが晴れたラビックはシスターたちに向かっていき依頼表を見せた。
「冒険者連盟ギルドから来ました。ラビックです。依頼内容を確認して貴方達の力になりたいと思いました。色々と拙いことをしてしまうかもしれませんがどうかよろしくお願いします。」
ラビックが最後にお辞儀をしたのは良かったんじゃないだろうか。
シスターたちの返答はどうなるのか。
ラビックのできたばかりの心の声はみんなに届くのか。
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