第5章 23話 誘宵の月伝説①

 伝説は、はぐれた恋人たちが光月にいざなわれて再会し、月の祝福を受けたというものだ。


 祝福を受けると、恋人たちの恋は永遠になるらしい。


 誘宵いざよいの月伝説という伝説だ。


 恋人たちは、光月の夜にわざとはぐれる。そして、相手を探す。月の導きを感じながら探し、相手を見つけたら、恋が永遠になるそうだ。


 祭りは三日間続くが、試せるのは一度きりらしい。


「いざよいの月は……」


 いざよいの月は、月がためらうという意味。


 いいかけて、ゆん菜は口を抑えた。


 ゆん菜が前いた世界では、いざよいの月は月がためらうという意味だ。うっかり、そう話してしまうところだった。


 召喚者だと知られてしまう。


 祭りでは夜店も出る。お城の広間が開放されて、舞踏会も開かれる。


 光輝く月の下、夜通し楽しむのです、と、聖女は微笑んだ。


「山海の女神の名をとってサーヴィア祭りといいます。マリーユナの幻想術……」


 聖女は思い出したようにつぶやく。


「あの幻想術を披露して、霊力の星を灯すのもいいと思いますよ。みな、喜ぶでしょう」


 皆で独創的な霊力を灯して、披露する場もあるそうだ。

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