第31話 イカロスの探求者

暫くの間、ルフ達はその場に留まっていた。アランの心の傷を癒す目的もあったが、自分達の整理をつけたかった。太陽を見つければアラン以外の存在は、太陽の光によって死んでしまう。夢が叶う代わりに死を受け入れるか、夢が叶わないが生を受けるか。前まで賑やかだったご飯も今は静かなものだ。


 それが三日続き、二回目のご飯の時、踏み出したのはアランであった。


「オレだけが地上に行き、カメラで太陽を撮ってこようか」


 四人はアランの顔を見つめた。アランは以前と変わらない無表情に近いものだった。アランからしたら、一番被害が少ないと考えての提案だったのだろう。死んだら終わりだからというのは、アランが痛いほど分かっていたからだ。


「嫌よ」


 その案を否定したのはベルであった。ベルのレモンイエローの瞳は静かに燃えていた。


「アタシは死んでも太陽を見に行くわ。だから、連れていきなさい」


「だが……」


「アタシが行くのよ。アタシの死に方はアタシが決めるわ。誰が何と言おうと辞める気はないから」


 止めようとするアランに対してベルは遮るように意思を貫く。その姿に揺らいでいたルフの心はますます揺らぎ始める。太陽を探しに行こうと言ったのは自分だ。なのに、自分は死が怖いから動けずにいる。なんて情けないことか。そんなルフに対してベルは真っすぐに見つめる。


「ルフ。アタシが言ったから行くと言うなら殴るから。アタシはアンタの死を背負う気はないわ。自分の生き方は自分で決めて」


 幼馴染故の勘づいたのだろう。ルフの弱い部分を知っているからこそ、あえて突き放すベルにルフは縮こまる。本当はベルが行くと言うならとか言って流されたかった。そしたら、楽に過ごせる気がした。きゅっと締め付けられる心を誰にも見られたくなくて、ルフは一番にテントに戻る。


「寝て起きたら行くわよ。アランはルフに伝えておいて」


「いいが、本当に行くのか?」


「えぇ、二言はないわよ」


「分かった。ソフィアもローも考えておいてくれ。オレは生に縋ることは恥だとは思わない。自分が納得できる答えを見つけてくれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る