ネオ赤羽駅五丁目
山手線に乗り、池袋駅に行った。
西口出口に向かって歩いていると、「期間限定出口はコチラ→」と看板が出ていた。期間限定という言葉に弱い私は、気付けば矢印に従って歩を進めていた。
地下街を五分ほど歩いただろうか。
私の目の前に巨大なエスカレーターが出現した。エスカレーター前にはご丁寧に「期間限定だよ」とだけ喋るpepperが配備されている。
どれほど大きいだろう、例えるなら、ボウリングのレーン五本分ほどの太さがあった。先は果てしなく、霧がかっていてよく見えない。
更に、そのエスカレーターは昇りだけで降りはどこにもなかった。一度昇ってしまったら最後、二度と降りては来れないのだろう。
私は意を決し、そのエスカレーターに乗った。私が乗ると、近くで様子を見ていた外国人観光客であろうカップルがそれに続いた。これが果たして外に出るためのものなのか、考えあぐねていたのだろう。
「エッエッエスカレーターに乗る時は〜手すり掴まって黄色い線の内側でじっとしていてね♪」
こち亀が始まる時の「テッテッテレビを見る時は〜」の替え歌で注意喚起がなされている。どう考えても歌詞を詰め込みすぎており、「黄色い線の内側で」の部分があからさまな早口になっている。
私は葛飾ラプソディを口ずさみながら手すりに掴まった。
手すりは少しヌルヌルしていた。
それから三週間後、私たちはようやく地上に出ることができた。
途中、空腹で意識を失いそうになることもあったが、その度に外国人観光客がドンキで買った変な味のグミを渡してきてくれたので、なんとか生き延びることができた。
ありがとう、知らない国の知らない人たち。幸せになれよ。
出た先はゲルググの石像が建っているだけでおなじみ、ネオ赤羽駅五丁目だった。
私はネオ赤羽ではなく池袋で用事があったので、ネオ赤羽駅からネオ電車に乗った。ネオ電車は単三電池二本で動く。
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