第9話なかなか踏ん切りがつきません

「なんだかスランプ中」

 早すぎるスランプ。吉田さんはゴールデンウィーク中に6級登れるだろうと言ってくれたけど、もう5月末。私はサークルに行けてない。吉田さんの前で、登れていないという事実を受け止められなかった。なぎさや桜さんからラインが届いていたけど、空気を読んだように吉田さんからはなかった。一番話をしたい吉田さんから連絡がない。分かってる。登れませんって言えばいい。ボルダリングがうまくなれないから少しつらい。言えればいい。お風呂上がりにもんもんとしていたら、桜さんからラインが来た。

ー今少しいい?

ーOK 

と返すと、電話がかかってきた。

「最近、未来ちゃんはサークルもジムもこないでしょ。みんな心配してるよ。何かあった?」

ゆっくり、丁寧に話してくれる声に、目頭が熱くなった。

「ボルダリング、うまくいかないんです」

 笑われるかと思った。桜さんは6級専門。私よりボルダリングにセンスを持っていないように思っていた。

「ボルダリング、いやになった?」

 優しく問いかけられた。

「ボルダリング、今はよく分からないです」

「初めて登った日、覚えてる?」

 ――――あぁ、

 初めてボルダリングをした翌日、感じたことのない筋肉痛を3日間味わった。それはそれはつらかった。でも、ボルダリングは楽しかった。こんなに身体が痛くても、またやりたいと思った。

「今日ジム行こうか! 14:00ね。私と2人」

 桜さんは先輩だった。


 1才でも先輩って大人ですね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る