せん妄
@cakucaku
第1話
まだ湿気の残る8月末の深夜2時、自分の歳よりも古い2DKのアパートの一室。
エアコンの付いていないこの部屋はいつも窓を少しだけ開けている。微かに入ってくる風はじとっとして体にまとわりつく。
汗でべたべたした体を流そうと脱衣所に向かった。深夜だというのに電気も付けず月明かりを頼りに。
玄関の横にある脱衣所についた時、外に気配を感じた。
ふぅっと深呼吸をし、ドアの覗き穴に目を近づけた。
額に汗が伝った。
もう一度深呼吸をし、素早くドア開ける。
目の前に立っていたのは自分よりも30センチ程背丈の高い男だった。目は虚で生気を感じない。
10秒ほど見つめていたが、一向に動こうとしない為その男の手を掴み玄関先に引き入れた。男の顔や手、着ている白いシャツは半分以上が赤く染まっている。
そのまま脱衣所に男を連れて行き、手を洗ってあげた。濡らしたタオルで顔も拭いてあげた。そして殺伐とした部屋に連れて行くと座らせた。
すると男は力なく横になりスヤスヤと寝息を立てて眠った。
月明かりに照らされた男の顔はとても綺麗だった。
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