封印を破って復活した魔王、世界が滅びている事を知って世界を創り直す事にした
登龍乃月@雑用テイマー書籍化決定!
第1話 混沌の魔王ここに復活! あれ? 誰かいないの?
「だーーーっはっはっはっはっ!! 我! 混沌の魔王復活ぅぅぅぅうあ!! おら! 側近んんんん肉だ肉だ肉持ってこいやああああ! あと酒と女あああああ!! スライムでも狐女でもスキュラでも何でもいいから連れて来いやあああ!!!!」
真っ暗な室内に絶叫にも似た声が木霊する。
真紅の輝きが暗闇に浮かび上がり、忙しなく動いている。
その輝きはグルグルと周囲を見渡し、正面を見据えてピタリと止まった。
「あれ? 暗くない? ねぇねぇ、我起きた、我が起きたんだよ。え? 側近どうした? 寝てんの? ちょっと明かりつけるよ? 寝てたらごめんね?」
地獄の底から聞こえてくるようなおぞましい声が暗闇に響く。
しかし、それに応える者は誰もおらず、ただただ室内を反響し、宙に消えてゆく。
混沌の魔王は、ひとしきり部屋に木霊する自らの声を聞き、軽く頷いた後、部屋から出るべく静かに歩き出して鋼鉄製の扉の前に立った。
「ねぇねぇ、扉あけたらサプラーイズ! とか無いよね? 起き抜けにそんな事されたら我驚いて魔力暴発しちゃうかも知れないからやらないでね? 絶対にやるなよ?」
魔王の問いかけに答える者は勿論いない。
魔王は一つ大きな深呼吸をして、扉のノブを回し――。
「ん……開かない……」
押しても引いてもビクともしない頑強な扉の前で、少しだけ寂しそうに佇む混沌の魔王。
それもそのはず、現在魔王がいる部屋は封印の間。
おいそれと簡単に開いてしまう扉なんて意味がない。
部屋の外側、つまり扉の向こう側には幾重にも重ねられた強力な結界が貼られているのだ。
複雑な解除式を起動するには莫大な魔力が必要となり、理論上では誰も封印を解く事が出来ないとされている代物である。
「我扉如きが我の邪魔をするか……」
とは言え、内側から開けられる事は想定してしないため、封印はかけられていない。
外側からの強固な封印にの影響により、内側からも多少の事では破られる事は無いのだが……。
「そいや」
魔王の手に生まれた黒球がドアに叩きつけられ、派手な音と共に扉は粉微塵になってしまった。
「うっわ……何この封印、エゲツな……マジウケるわー」
半径10メートルの床と壁、天井に及ぶまでに描かれた幾何学模様の魔法陣を一瞥し、過去の経緯を思い出した魔王は、深い感傷に浸るわけでも無く、スタスタと歩き出した。
派手な破壊音が鳴り響いたにも関わらず、人が来る様子は皆無。
しん、と静まりかえった通路の先に、下へ降りる階段を見つけた魔王は足音を殺して静かに階下へ向かったのだった。
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