紫田 夏来

第1話

 光っている。

 輝いている。

 雲間から覗く太陽が川を照らして、私はそれを眺めている。

 ああ、この「きらきら」の中に入り込んでしまいたい。

 土手の草むらに座っていた私は立ち上がり、ゆっくりと「きらきら」に近づいていった。ただまっすぐに、私は「きらきら」になろうとした。石畳は歩きにくい。気づけばサンダルが水に浸かっている。足首、脹脛ふくらはぎ太腿ふともも、下から順番に輝き始める。もっと、もっと、もっと。

 ふいに地が無くなった。私の全身は「きらきら」の中に入った。これで私の望みは叶う。酸素がなくても、喜びを感じることはできるみたいだ。

 しかし、何故だろう。せっかく「きらきら」になれたのに、手足をばたつかせている。

 その時。

 ぐいっと右腕が引っ張られた。顔が水面の上に出て、空気を手に入れた。私はそのまま、力ずくで石畳の上に載せられる。

「川は急に深くなりますよ。」

 ハンドタオルで髪を拭いてくれる。このお方は誰だろう。見知らぬ男性だ。

「どこからいらっしゃったんですか?」

 ああ、「きらきら」から現実へ、戻ってきた。

「僕の家、すぐ近くなので、とりあえずうちへ。それで良いですか?」

 私はそっと頷いた。

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