第六話 怠惰
ずっと寝ていた。15時間くらいかもしれない。
まだ完全に休めた、というには程遠いけど。
両親が死んだわけだ。よくよく考えたら一か月以上は休む時間が必要なはずだが、私の立場上それが叶うかわからない。
目が覚めてから、変わったことが私の身に起きていた。
切られて無理やり接合した私の足が、なんか変だ。
剥がれている。そして切られた箇所から新しい足が生えているのだ。正確に言えば、私の体内は触手、管、陰茎の役割も担っている気持ち悪い何かの束、集合体に代わってしまっていると予想してるが、それが伸びてきた。伸びてその表面に皮膚ができており、新しい足が生えている。
新しい足が生えたのだから残った古い切り落とされた足は一体何なんだろう。腐って跡形もなく消えているという最悪の事態は免れているようだ。
真紀と名乗っていた刑事の女性に報告し、やつらに関するヒントになるかもしれないと伝えて渡した。
再生まで大体二日を要した。人類が負けることはないだろう。
私から体の一部を提供してしまったが、これをいいことに私に人体実験でもしようとしてくる人たちが来るんじゃないだろうか。
それは、嫌だな。
真紀「麗美が君に会いたがってる。お友達同士を再開させたいが、一応Ω性との接し方について君が本当に安全かはまだ分かってない。つーわけで、Ω性の犯罪者を実験に使ってみる。」
緊急事態だからなのか、私を実験してるのか、何名かの大人が視察に来ているようだ。
Ω性で収監されている最中の若い女性が目の前に連れてこられた。
大量の銃口を向けられたまま私は居心地のいい独房から出る。確かにこの拘束された女性はΩだと分かる。ついでに、周りにいる人たちがαかβかも分かるようになっていた。βのほうが多い。敵を増やさないようにするためだろう。
別に私は何もしない。Ωだからってなんだ。別にこの女性はヒートじゃないし、何があるっていうんだ。
浩美「特に、何も感じないというか、なんか、シュールな絵面ですね......」
麗美と会っても問題ないという結論になった。
数時間後、私は別室に連れられ、数日ぶりに顔見知りの友達と会えた。
念のためではあるが部屋の外には拳銃より物騒な武器を持った人が五名、全員βだ。
だが麗美と会えてうれしい。
麗美は、泣いて私に抱きついてきた。どこまで知ってるのか。もし姉と両親のことについて知っていたとしたら、どれほど辛い立場なのだろう。
麗美「浩美、私寂しかったよ......お姉ちゃんはどこ?浩美はなんで警察署にいるの?」
知らない?事情を何も言われてない?
確かに警察側もどういえばいいか難しいだろう。麗美はまだ15だし。
それに、状況が状況だ。私は知っているから、異例中の異例だから両親がどうなったか言われたが麗美は何も知らない一般人だ、SNSなどに出回ってる情報を除けば。
浩美「......麗美、私が守るからね。」
遠回しに言っておく。物理的に守れるとは麗美は分からないだろうけど、万が一の場合のため。
麗美「わかった。お姉ちゃんのことも、守ってくれないかな。誰に聞いても答えてくれなくて。もしかして学校で起こった事件で......」
そうか。知らないから、学校での事件に巻き込まれたと考えてしまってるのか。
かける言葉が見つからない。正直に言うべきか、誤魔化すか。どっちを選んでも、瑠奈のことは死亡か人間じゃない怪物になったかの二択。私には、到底選べない。
浩美「瑠奈のことは......私も知らないんだ。警察に、頼んでくれ。」
私より麗美のほうが辛いはずだ。
麗美「......わかった。」
しんどい。心に大きな重荷があることを思い出した。麗美のことを面倒見る.......っていうのは違うな。だがなんとか、麗美の安否が常に確認できる状態であってほしい。私の親しい人でまともな状態で残っているのは、麗美しかいない。
瑠奈のことはもう忘れたい。最後に会ったときは確か学校の授業中で、ごく普通にしていた。私に普通に話しかけていた。私はなんとか平静を取り繕っていた。
けど裏でα女性に触手ぶっ刺して仲間を増やしていた。そして私が麗美を連れ帰った放課後に学校中で大量に害虫を作った。まったく、酷いことだ。
学校では何もしないなんていう保証はどこにもなかったはずだ。
思い出したら疲れた。もう耐えきれない。
麗美「ねえ、しばらく一緒にいたいんだけど。」
浩美「私は今後どうなるかわからない。両親のこととか、いろいろ聞かされてる最中だ。」
麗美「......ごめん......」
両親云々はもう済んだことだし嘘だが、面倒な状況なのは確かだ。
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私の今後の処遇ってどうなるんだろうか、と刑事に問うてみたがまだ分からないらしい。
まだ、時間がかかるみたいだ。何しろ私は危険な可能性があるわけだから。
あとは託した。警察とかなんかに託した。もう何もしたくない。
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