タイムリープが終わったけど、全周回分の好感度がヒロインにインプットされました

カラスバ

第1話 物語を最初から

 彼女達を守るために始めたこの輪廻は一体どれほど繰り返されただろうか?

 少なくとも100回を超えたあたりから数えていないし、そもそも周回数は大切ではなく、あくまで重要なのは周回によって彼女達を日常に返す事だ。

 ……四人の女の子。

 そのうち、最初に死んだのは俺の幼馴染の草木まことだった。

 偶然の事故……車に轢かれた彼女。

 臓腑が漏れて血が溢れるその様を、今でも鮮明に思い出す事が出来る。

 もはや救う手立てはない。

 そう思った時に、……その輪廻は始まった。

 

 一ヶ月前の今日。

 全てはここに辿り着く。


 最初、幼馴染を救うためにした事と言えば徹底的に周囲を警戒して彼女の隣にい続ける事だった。

 その甲斐もあってか、彼女はその時まで死ぬ事はなかった。


 しかし、今度は後輩の今井なこが死んだ。

 ……自動車事故ではなく、転落。

 窓の外から見えた、降ってきた彼女。

 その影は如何にしてその道を辿ったのかは分からない。

  

 そして……時はまた巻き戻る。

 

 今井なこ、そして草木まこと。

 二人を守ろうとして、奔走して。


 次に死んだのは義妹の高田ゆかり。

 

 ……次に死んだのは、先輩の氷室まどか。



 誰かが死ぬ。

 どうやっても、彼女のうち誰かが死ぬ。

 

 その謎を解き明かすために努力して、果たしてどれほどの年月が経っただろうか?

 分からない。

 ……やはり、時間は関係ない。

 俺にとって重要なのは、彼女達を救ってこの輪廻を脱する事なのだから。


 そして、ついに俺は最期のチャンスを手にする事となる。


 四人達を学校に引き止め、安全な場所にい続けさせる。

 四人のうち誰も欠けてはならないが、運命は必ずしも一人の命を奪うとは限らない。

 複数人死んだ時もあった。

 油断は出来ず、一部に集まる事も危険。

 

 ……あとは、時間の経過を待ち「その時」がやって来て、そして過ぎるのを待つのみ。

 一秒、また一秒と時が過ぎていき。


 そして。











「は?」


 突っ込んでくる車の突進をその身で受けた。

 くるくると、まるでメリーゴーランドのように回る視界の中でふと思う。


 ああ、そう言えば傍観者たる俺が死んだ場合どうなるかを検証してなかったな、と。




  ○



 そして、目を覚ましたら俺は空き教室の机で眠っていた。


「ぇ」


 斜陽に染まった教室。

 起き上がってスマホで時間を確認すると……あの時、その時間。


 誰かが死ぬ時間。


「……っ」


 俺は慌ててそこから離れ、四人の姿を探す。

 やばい、もうじき誰かが死ぬ。

 でも、みんな一体どこに……?


「あ、侑くん」

「先輩」

「お兄ちゃん」

「侑さん?」


 そこには。


 四人の姿があって。

 視界のうちにあった時計は「その時」が過ぎている事を教えて。

 一体、何がと脱力する俺の身体を、四人が支えてくれる。

 そして、言う。


「侑くん、大丈夫だよ? これからは全て私達がなんとかするから」

「先輩はただ、私達に任せてください」

「お兄ちゃんはもう休んで?」

「侑さん、おやすみなさい」


「みん、な?」


 様子のおかしい四人は笑う。


「「「「あは」」」」


 その意図を尋ねようとし、しかし。

 途端、何故か猛烈な睡魔が俺を襲って来て……

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