二重人格の犯人

グカルチ

第1話

Aさんには姉がいた。といっても学生時代に俘虜の事故でなくなった。事件性がないとされたがAさんは当時、ずっと疑っていた。これはそんなAさんが高校生時代の話。


怪しい人間はいた。というのも、同級生のB子が、あるときから姉ににた言動をとりはじめ、趣味やら性格、好みすらも姉そっくりになり始めたからだ。B子は黒魔術に凝っていると噂されB子が死後の姉に何かをした、あるいは姉を殺したのではないかと疑っていた。


恋人のCさんはいい人だった。姉の死後色々世話をしてくれたし、友達も多い。Aさんの突拍子のない仮説も信じてくれた。


しかし、証拠は一切みつけだせない。あるときAさんは姉がなくなった場所にB子をつれていくことにした。B子は、相談があるというと案外普通についてきた。そこでB子に昔の事や、いつから垢ぬけたのかという話をつづけた。


B子は姉をまねるように垢ぬけ始めてから別人のようになりはじめ、周囲もそれを二重人格かと疑ったりしていたが、いつの間にか慣れてしまっていた。Aさんだけが、彼女の怪しさに気づいていたのだ。


「ねえ、この崖、覚えてない?」

「何が?」

B子は、姉がおちた崖をみても、何の変化もみせなかった。

「あんた、私の姉に何かしたでしょ」

「え?私はただ……」

 そこで、B子は、何かをいいかけた。

「私はただヴィジャボードをつかって、それから幽霊のいう事を聞き始めて、きいてから、何もかもうまくいくようになって……」

「あんたが、ここでお姉ちゃんをつきおとしたんでしょ!!」

 つめよるのでB子が落下しそうになった、それをさけて、逆にAさんが落下しそうになったとき、がし、と腕を掴まれた。

B子は、自分の腕をつかみながらいった。

「いい加減にしなさい、この子の言っていることは本当よ」

 その声色は、姉そっくりだった。引っ張り上げられ助けられた後、B子に詳しく話をきいた。

「本当にたまたまだった、あなたのお姉さんだったことをしったのはつい最近よ、たしかに不慮の事故だったらしいけど、確かに何かを隠している様子もある」

 そういって、彼女は奇妙なお守りをとりだした。

「このお守りに念じると、少しだけお姉さんと入れ替われる、やってみる?」

 Aさんは、その話をうけいれ、姉と話そうと試みた。

「ロイムロセル……姉さんと変われ」

 B子はふっと立ち上がったと思うと白目をむき、ばたっと、あしからくずれおちた。

「B子?」

 ふっと突然顔を上げると白目をむいたまま、声色がかわった彼女がはなしかけてきた

「久しぶりね、A子」

 紛れもない彼の姉だった。


 その翌日、Aさんは校舎裏にCさんを呼び出した。同じ高校で先輩だったCさんは気さくに応じた。

「あそこで、姉が死んだとき、実はあなたも一緒にいたでしょう」

 奇妙だとおもっていた。姉が死んだ場所は、観光スポットでもある小山だが、心霊スポットともよばれることもある。そんな場所に姉が一人でいくはずがない。

「ごめん……」

 あのときAさんは、呼び出された姉と話た。姉が言うには夜景を背景にCさんがAさんを撮影をしようとして、一歩一歩下がるように命じられて、姉は彼の言う通り、一歩ずつ後退した。悪気はなかったCさんだったが、Aさんは、そのままさがりつづけ、崖に気づかずに落下した。

「あの時、彼女をおいて逃げた、だから怒っているんだろう、俺は呪われてもしかたがない」

「いいえ」

「え?」

「あの時あねは、ふざけて、自分から下がりつづけた、木の影にかくれて脅かそうとした、暗闇で崖が近いのもわかっていた、それに、夜景を背景に自分をとれといったのは自分、あなたのせいで死んだわけではないし、そう疑われてもしょうがない、気弱なあなたがにげたのもせめていない、あなたが墓参りにもお葬式にも来なかった事を怒っているだけです」

Cさんは、悲しい顔で笑いながらないた。

「私は許しませんけど、姉はあなたをゆるしています」


 その後、BさんとAさんは友人となり、時たま姉と変わり話すことがあったが、数年がたちAさんの中の悲しみが薄れると、姉は成仏していったようだった。

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二重人格の犯人 グカルチ @yumieimaru

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