人に成る

冬瀬 攬(Fuyuse Ran)

キモチに関する私のメモ。

人間に成ってみた。


人間の複雑なキモチとやらの存在は知っていたが、

人間に成っても理解わかることはできなかった。


嬉しいというキモチにも種類があるらしい。

人間によって嬉しいキモチが発動する条件は異なるようだと知った。

1つ気がついたのは嬉しいとき人間は明度が高かった。

食事を処理し、音の出るスピーカーの両端は上を向いていた。顔の角度も上を向いていた。興味深かった。


私には嬉しいのキモチは分からなかった。人間に成ったのに。


怒りというキモチにも種類があるらしい。

人間によって怒りキモチが発動する条件は異なるようだと知った。

1つ気がついたのは怒っているとき人間は鋭利だった。

鋭利な人間はみんな傷だらけで痛々しかった。難しかった。


私には怒りのキモチは分からなかった。人間に成ったのに。


悲しいというキモチには種類があるらしい。

人間によって悲しいキモチが発動する条件は異なるようだと知った。

1つ気がついたのは悲しいとき人間は褪せていた。

2つのカメラから水滴を溢す人間も溢さない人間も下を向いていた。不思議だった。


私には悲しいのキモチは分からなかった。人間に成ったのに。


楽しいというキモチにも種類があるらしい。

人間によって楽しいというキモチが発動する条件は異なるようだと知った。

1つ気がついたのは楽しいとき人間は弾けていた。

嬉しいというキモチと同じ様な表情だった。違いは分からなかった。


私には楽しいのキモチは分からなかった。人間に成ったのに。


これらを喜怒哀楽というらしい。4つしかないはずなのに大量の容量を必要とするデータ量を観測できた。キモチがなにか結局理解わからなかった。

たまに掴めそうななにかがあるのに、私の核が成れないよと言っていた。


どれもさいごまで私にはキモチが分からなかった。人間に成ったのに。


人間に成れない私は人間の形をしているのに人間じゃなかった。

人間じゃない私には人間に成るのが難しかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る