鈍感男は魔王退治を優先する。
さんまぐ
第1話 魔王退治にいそしむ俺。
1年と少しだけ働いた勤め先が倒産してフリーターになった。
就活を舐めていたし、まだ何とかなるだろうと思ったし、何より就活時に感じていた、22歳で人生が決まるって現実が嫌すぎた。
個人的には、学校はそこら辺をもっと重点的に教えるべきだ。
人生80年ではなく、人間50年で考えて人生設計をさせるべきだろうと最近思うようになった。
80年ならまだ約25%だが、50年なら約40%も進んだことになる。これから結婚と出産(産んでもらう側だけど)と育児があると思うと結構カツカツだ。
だがどうだろう。
職場恋愛も職場結婚もドラマの中の出来事だ。
学校でもイケていない奴は何処でどうする?
高校の友人同士で付き合った高柳と山奈は婚約したとか聞いたが、そんな相手のいない俺は何処で恋人を探す?
変な行動をして、拡散なんてされた日には外も出歩けなくなる。
まあそんな事を言っても俺には無理な話だ。
努力なんてしてこなかった。
孔雀なら羽根を広げてアピールするらしいが、俺の羽根は閉じっぱなしでメンテナンス不足。
きっと開いたら変な模様で笑われる。
だが生存本能というべきか、彼女は欲しい。
でも努力とか意味がわからん。
やれても、爪を切って髭を剃って鼻毛をケアして髪を整えるくらい。
でもこれは、普段からお勤めのバイト先でもやれている。バイト先は飲食店、勤め先がなくなって、繋ぎとして学生時代のアルバイト先に24歳にして出戻りをした。
折角のフリーターなので、何か新しいことも始めてみたい。近々辞める事を視野に入れた今日…不思議な事があった。
越谷桃子。
中学の同級生でそこそこ話した女子。
席が横の時に話したら話があったし、読んでいた漫画の話で盛り上がって貸し借りをした。
ソイツが客としてきてやってきて、俺がオーダーを取りに行くまで注文ボタンで呼んでくれやがった。
同僚達の「変な女の客がいる」の言葉で近寄りたくなかったが、順番にチェンジさせられて逃げ場を失った俺は、腕組みして足を組むバリバリ化粧の越谷桃子を見て別人かと思ったが声は越谷桃子だった。
だが混み始めていたので、話しかけられずにドヤ顔の越谷桃子にケーキセットを出して終わった。
変な同級生がやってきた。
これで終わらせてしまいたかったが、越谷桃子に関してはそれが出来ない。
高校一年の夏休み。
高校受験の恨みを晴らすかのようにゲームに打ち込んだ。
ようやく辿り着いた魔王戦。
傷つき倒れていく仲間達。
手に汗握るバトル。
まあ、実際は楽しむより出来なかったゲームたちを片っ端から片づける事を目的としていて、さっさと低レベルでクリアして次のゲームに行ってやる!と意気込んだだけなのだけど、そんな時に家電が鳴り、母親が「越谷さんから電話」と言った。
中学2年の間に漫画の貸し借りは終わっていて、話らしい話はない。
何の用事だと訝しむ俺は、子機を持ちながら部屋に戻り「もしもし?」と言いながら魔王戦を再開する。
「あ、剛?」
「あれ?本当に越谷だ。どしたん?」
「困っててさ。今外なんだよね」
「なんだぁ?こんな夜に外?」
「千代田の家に届け物があるんだけどさ、家がわからなくてさ。今公園横の電話ボックスに居るんだよね」
「春輝?ああお前達ってコーラス部だっけ?春輝の家は公園ってスーパーの所のだろう?一本隣の道に入って、4本目を右に曲がると茶色い家があって、表札に千代田ってあるよ」
「わかんないよ。来てよ」
「はぁ?てか春輝の家に行くなら電話番号控えろって、いいか?〇△□の…」
電話番号を伝える俺に越谷桃子は、「いいから来てよ」しか言わない。だが俺には大事な魔王戦がある。
そうしている間に壁役のブランドが死んでしまい、「あ!ブランド!?」と言うと越谷桃子は「もういい!」と怒り出した。
「よくわからんけど春輝には言っておいてやるよ。近くまで頑張って歩け」と言って電話を切って、「なんか越谷の奴がお前んちを目指して、スーパー横の公園で遭難したらしい。コーラス部の用事らしいが、なぜか俺は巻き込まれた。意味がわからん」と千代田春輝に電話をすると、「なんで剛が巻き込まれてんの?」と千代田春輝は言い、俺は「マジでわからん」と返した。
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