第2話 ︎︎籠の鳥
カミルに手を引かれ、やってきたのは白い壁に翡翠が散りばめられた離宮だ。入口で先導の侍女が礼を取り道を譲る。
カミルはそのまま扉を開けた。
部屋に一歩踏み込んだ途端、白檀の香りが漂う。奥にはカミルの背中越しに大きな寝台が見えた。白檀は崔淫効果のある香だ。ここはつまり初夜の
「ちょっと、離して!」
抗議の声を上げると、カミルはにやりと笑った。それは意地悪で楽しげな顔だ。
「やっと喋ったな。人形かと思ったが、ちゃんと血の通った人間らしい。安心した。可愛い声だ」
そう言いながらも寝台に近づいていく。
そのまま寝台に投げ出された。
はずみで衣の裾が捲れ、細い素足が晒け出される。
ただでさえこの国の花嫁衣裳は布地が少ないのに、素肌を初対面の男に見られるなど恥でしかない。慌てて裾を正すとカミルは声を上げて笑った。
「そんなに慌てなくても、子供に手は出さないよ。お前、まだ十三だそうじゃないか。子供を花嫁に差し出すなんて、
「子供じゃないわ! ︎︎もう
笄礼とは
「そりゃ、確かに他の人より早いけど……でも前例が無い訳じゃないわ」
「私は……」
それっきり黙り、俯く
「死ぬ予定が外れて不服か?」
核心をつくカミルの言葉に
どくどくと心臓が煩く鳴る。目論見がバレてしまっては
負け戦になろうとも、
ただ死ぬだけでは駄目なのだ。自死を選んでも、セーベルハンザを討つ理由にはならない。どころか、逆にセーベルハンザに有利になる可能性が高い。
そうなってしまったら、
そんな
「俺も本当は死ぬはずだったんだ。考える事はどっちも同じ。父は俺を殺して
離れようと暴れた
まさかセーベルハンザも戦をする気でいたなんて思いもよらなかった。国力に差があるのだから、そんな小細工を弄する必要は無いように思うが、やはり必要なのは大義名分。侵略は諸外国の反感を買いやすいものだ。
第三王子など予備の予備。第八公主という立場の
王や帝は女を囲うのも共通するところだろう。
「俺の母はハレムの第七夫人で身分も低い。弟達の方が余程王位に近いよ。だからこの婚姻には俺が選ばれた。死んでも惜しくない俺が」
後宮での扱いも酷いものだ。
おそらくハレムも似たようなものだろう。女が一人の男を巡って争う、醜い場所。しかもその目的は愛では無い、権力だ。国の女の頂点に君臨し、金を湯水のように使う。
そして運良く男児を産めば、次の目的は玉座に向かうのだ。しかし、それが女児であれば寵はあっさりと失われる。特に秀でた美しさを持つ女であれば、寵は注がれ続けるかもしれない。だが地位を得た者との扱いの差はやはり大きい。
表舞台に立つために、人々の羨望を浴びるために、女達は争うのだ。
失っても、なんの損失も無い
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