第16話 最強王女

 降り注ぐ流星を横目に魔王を睨むミリア王女へ、ついに最初の燃え盛る流星が接触しようとしている。赤熱した流星はぬかるんだ大地を赤く照らした。


 拳に闘気を集中したミリア王女は気合一発と流星へ拳を突き上げる!


「破ァです!!!」


 それを受けた燃え盛る流星は一瞬で鎮火してひび割れ、三三四五に飛散すると魔王目掛けてぶっ飛ばされていく。


『はぁ!? なんだそれは!?』


 まさか流星を使って反撃されるとは考えてもいなかった魔王は飛び散ってくる流星の破片で散々な目にあった後、慌てて新たな流星をぶつけて纏めて叩き落した。


 流星を無駄遣いさせるのに成功したミリア王女は魔王に拳を向けて頬を上げた。


 防御に使った燃え盛る流星が遠くのぬかるんだ大地に落下して、こちらまで轟音が響いてくる。その衝撃で吹き飛ばされてきた泥で魔王城跡は泥濡れになっていき、そこに城があったとは誰も思わない惨状が残された。


『星一つでダメだったら! 纏めてぶつけてやるだけだ! 星三つでどうだ!』


 自らへ拳を真っ直ぐ向けられたことを挑発と取った、額から青い血を流す魔王は流星の配置を確認すると、流星に複雑な軌道を取らせてミリアへ殺到させる。


 真上から一つ、左右から時間差で二つの星をミリア目掛けてけしかけた!


 それを見上げたミリアは悪戯を思いついたように頬を上げて最初の流星に向かって自分から空を駆けて突っ込んでいく。


 一つ目の流星の時とは違い、収束された闘気が拳に籠められた事によってミリアの拳が光り輝いた。


「破ァです!!!」


 一つ目の時と同じく一瞬で鎮火した流星は砕ける事なくぶっ飛ばされて、左右から迫っていた流星に次々と衝突、それぞれの軌道を明後日の方向に変えてしまった。


 その結果に呆然としていた魔王は、空を駆ける王女ミリアの次なる行動に気が付くことが出来ない。


「破ァです!」


 軌道を変えた流星に追いついたミリアはそれに回り込むと、収束した闘気の拳を叩きつけた。一瞬で消火された真っ黒な流星は鋭角に軌道を変えて突っ込んでいく。


 目標は当然魔王だ!


 地面と平行に自分へと迫る真っ黒な流星に夜の闇のせいで直前まで気が付かなかった魔王は、紫に輝く両手を前に突き出して止めようとする。


 残った城の残骸を次々と粉砕しながらも、魔王は流星を受け止めた。


 魔王の制御を離れた流星が次々と沼地を埋め立てていく。


 赤熱した流星の光で真っ赤な世界の中、ボロボロになった魔王の背後に、白いドレスのミリアが立っている。


 荒れ果てた魔王城跡地に襤褸を着た魔王と白いドレスを着たミリアが立っている。


 振り返ることなく魔王は宣言した。


『王女ミリア、お前こそが最強だ』

「魔王も中々骨のある奴だったです」


 敗北宣言への返事と共に振りかぶった拳で隕石を破砕して、お片付けを完了した王女ミリアは魔王に背を向けて、王子を担いだ勇者と籠を頭上に掲げた銀色ミリアを伴い帰っていく。


 自分が最強であると驕った魔王の野望をぶっ飛ばしたのだ!


 すでに気力だけで立っていた魔王は膝を突くと、這いずってきたキュプロやノーネッガと共に今後の事を相談し始める。


『人間って怖い。我、山奥でスローライフするわ』

『俺も完全に同意です魔王様』

『人間は恐ろしい生き物だと、オイラも思うだ……』

『キュッキュキュ!』


 浄化されたフレアドラゴンは言葉も話せないほど若返ってしまったが、激しく首を上下しているので賛成のようだ。


 ぽっきりと折れてしまった魔王達のスローライフはまた別の話。


 #####


 ミリア達はお城に帰ると今回の顛末を王様に報告した。


 その結果、アルス王子は結婚前だがミリアの城に住むことになった。

 魔王はぶっ飛ばしたが、それなりに有力な魔の者は多く存在しているため、一緒に住んでいた方がもしもの時、助けに行きやすいという話になったのだ。


 勇者アリアは今回の件で強大な魔族を二体浄化するという大戦果を挙げたので、お城勤めをする事になる。有能な人材を在野に放置するほど、王様もボケていない。


 銀色ミリアは、アルムという名前を与えられてミリアの妹として遇されることになった。あまりにも強すぎるので……。


 博士はアルムの監視下で悪い研究をしないように見張られている。


 王女ミリアはちょっと予定外の同居、新たな妹に雇われる事になった親友とのこの先の生活を楽しみに、ゆっくり歩いて自分の部屋に帰っていく。


「魔王軍をぶっ飛ばしたです」



 王女の一撃、完結!




 ――あとがき――


 これにて王女の一撃は完結です!


 今後の王子奪還や新しく妹になったアルムに魔王達のスローライフと、なんだか番外編や続編が色々書けそうな感じに中編を終わらせることが出来て良かったです!


 特に何もなければ、みんな幸せに暮らしたと言う事でしょう……!


 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


 出来れば、応援や星での評価をしてもらえたら嬉しいです。

 コメントお待ちしております……!


 そして、新しいタイトルの連載を始めました……!


 

 ガチャ魔法少女は爆死する

 ~滅べ!憎き物欲探知機、UR確定演出!目的じゃない戦力強化のURです……~

https://kakuyomu.jp/works/16817330665617515614


 強い魔法少女がガチャの為に悪魔をぶっ倒すお話です!

 今回は魔法少女物を目指します。

 おまけに私の好きなガチャ物です。


 こちらの応援やフォロー、評価もできればよろしくお願いします。

 読んで貰えたらとても嬉しいです。

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王女の一撃 ランドリ🐦💨 @rangbird

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