第10話 心眼王女

 三人衆を片付けた二人は、鬱蒼うっそうとした森の中に足を踏み入れていた。


「それにしても、よみがえるなんて驚いたね」

「何度でも片付けてやるです!」


 よみがえった敵に驚く勇者と、結婚の邪魔をするなら何度でも倒すと意気込む王女は、森の中で大変目立っている。


 そんな大変に目立つ二人へ何処からともなく声を掛ける存在、再生された四天王だ!


『待っていたぞ! 王女と勇者よ……! ここがお前たちの墓場だ!』

「この声は銀色のあいつです!」

「四天王のシルバージェネラルだね」


 シルバージェネラルの抹殺宣言と共に周囲の木に『T』の模様が輝き浮かび上がると、それぞれが枝を手として地面から這い上がり、根を足代わりに立ち上がって木のゴーレムが完成、二人に襲い掛かる。


「木が動いて襲ってくるです!?」


 葉の生い茂った枝のビンタが振り下ろされると二人は飛び退いて回避して、森の中に巨大な枝帚の払った跡が残される。


 回避した先の木も立ち上がり枝を振り下ろす!


 次々と振り下ろされる枝のビンタに、森は二人の居る場所だけ赤茶けた土の露出した闘技場へと変貌へんぼうした。


「森が無くなっちゃった!?」


 闘技場の外側は木のゴーレムが囲っていて逃げ場が無い、まんまとシルバージェネラルの罠にはまってしまった様だ。


『どこに私が居るのか分からないだろう! これこそが真の安全確実な手! このまま木のゴーレム集団で血祭りにあげてくれる!』


 シルバージェネラルの再びの抹殺宣言と共に、木のゴーレムたちが二人に襲い掛かる。


「だったら全部ぶっ飛ばすです!」

 ミリアは襲い来る木のゴーレムを拳一つで次々とぶっ飛ばして、掘り返されたばかりの不安定な足場でも綺麗にステップを踏んでいる。


「ミリア! 囲いの外からどんどん増援が来る! キリが無いよ! サンダーブレイク!」

 全体を観察していたアリアがミリアに状況を伝えると、雷撃で木のゴーレムを打ち砕いた。


『ワハハハハ! 私が居る限り木のゴーレムは無限に出せるぞ! 』

「だったらお前を先に片付けるです」


 迂闊うかつなシルバージェネラルの発言にミリアの拳の矛先が定められた。


「そこです!」

 勇者が雷撃で作った戦闘の空白に、目を瞑り闘気を高めた王女は足元に向けて目を見開く!


「破ァです!!!」


 足元に叩きつけられた拳は地面を割り砕いていき、地中に潜伏していたシルバージェネラルの姿をクレーターの底に露出させた。


『ふざけるな! こんな滅茶苦茶なことがあるか! 』

「ミリアだから諦めてね? サンダーブレイク!」

 深い穴の底で抗議の声を上げる四天王へ、慈悲無き勇者の雷撃が撃ち込まれて、白く燃え上がらせる。


『グワー! 次こそ地獄に送ってやる! いつまで耐えッガ! 』


 負け惜しみを述べ燃える再生四天王をミリアが殴ってぶっ飛ばした。


「何度来てもぶっ飛ばしてやるです!」




 散らかしたら片付けるのがお母様との約束だ。


 ミリアはぶっ飛ばした木を殴って開けた穴に差し込んで、それをアリアが抑えている間に震脚で埋めてあげる。


「森は大事にするです」

「いい考えだと思うよ」


 そんな巨大な植樹を繰り返して、ぶっ飛ばされた木のゴーレムで死屍累々ししるいるいな闘技場は、疎らな木の森へと生まれ変わった。


 いずれは元の森に戻る事だろう。



 片付けを済ました二人は、更に森の奥へ進んでいく。

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