2023.11.19
スーパーへ買い出しに出かけた時の話。レジでバイトの女の子と男の子が談笑してる。俺は二人の間に水を差すことに気まずさを感じながら商品を置く。なぜ客が店員に遠慮する必要がある?俺はいつも人に遠慮ばかりしている。いつも後ろめたさだけが俺に憑いて回る。俺が店員の時は逆だった。バイト先の女の子と仲良くなんてなれなかった。楽しく談笑する暇なんて無くて、面倒な仕事を押し付けられ、碌に職場に馴染めず、客にへつらってばかりいた。ため息ばかり吐いていた。
「顔」
「顔」
「顔」
口にすることさえ許されなかった。人が造作もなく親しくなれるところを、俺は必死に尽くして嫌われている。馬鹿な話だ。あの二人にはバイトが終わったらお楽しみの時間が待ってるわけだ。意味がわからない。道行く男女の組み合わせを見る度に理解に苦しむ。
だいたいこんなに忌々しい季節もそうそうないよ!なんだってクリスマスの一ヶ月も前から仏教徒どもがイルミネーションやらオーナメントやらで町中飾り立ててんのさ!日本人も大概商売熱心だよ。お陰で駅へ行くだけで胆を嘗める羽目になる。
「なんの意味があんのさ?」
「哀しみと惨めさと悔しさにまみれて生きる人生に意味はあるか?え?」
「奴らの前でよ、死んでみせてよ、奴らを後悔させてやろうとも思わねえのかよ?
自分を見下してきた全ての人間どもを、もろともに地獄に引きずり堕としてやろうと思ったことねえのかよ?」
彼は正しい。その通りだ。
「でもだからこそ人ははぐれ者の活躍を夢見るんだろう。特命係や巨災対の活躍を夢に見てる。描いてる。」
空白に等しい7年間。シンゴジラの年から数えるとね。もっと長いかもしれない。もう何年も前から時計の針が止まったままだと思っているんだとしたら、どうすれば時計の針は再び動き出すと思う?
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