第25話「デート日の朝」
そして迎えた日曜日――。
「や、やぁ……」
デートと言っていただけあって、桂の格好には気合が入っていた。
上は白を基調としたフリフリがついたかわいらしい服で、下はデニムのミニスカート。
ヒールも履いていて、普段の桂とは違う女の子らしい格好だ。
普段の桂なら絶対しないだろう。
「落ち着きないな。普段しない格好だからか?」
ソワソワとして明らかに落ち着きがない桂に対し、俺は首を傾げる。
「まぁ、ちょっと張り切りすぎちゃったね……」
桂はバツが悪そうに視線を逸らしながら、髪を手で弄り始めた。
やっぱり、らしくない。
これは、デートの緊張によって空回りをしている――と思えるほど、俺の頭はめでたくなかった。
「それじゃあ、行こっか」
「……相変わらず、君は素っ気ないね。デートだと思ってなさそう」
俺の態度が気に喰わなかったのか、桂がジト目を向けてきた。
いや、だって……なぁ?
「安心してくれ。顔に出さないようにしてるだけで、内心十分テンパってるから」
「それはそれで、安心していいのか悩んじゃうものだね」
確かに、相手がテンパっていたら嫌か。
「彼女いたことがない歴イコール年齢の男には、こういう時どうしたらいいのかわからないものだよ」
「女の子たちに人気があるのに?」
「まだそれを引っ張るのか……」
女の子たちと言ったって、メインヒロインたちだけだ。
他の女子たちにはむしろ嫌われてすらいるだろう。
こんな素っ気なくて冷たいキャラなら、それも仕方がない。
そしてメインヒロインに関しても、個別ルートに入っているわけじゃないのだから、そこまで好感度が高くないはずだ。
桂から見て特別に見えるのは、そのメインヒロインたちと今まで親しくできる男子がいなかったからだろう。
世間一般的な基準では、メインヒロインたちから見た俺の立ち位置は、ただ仲のいい男友達程度のはずだ。
「事実そうでしょ?」
「全然事実じゃないな」
というか、そういう話は今やめてほしい。
聞こえたらどうするんだ。
俺が後で痛い目に遭うかもしれないじゃないか。
「そんなことよりも、早く行こう。遊園地だってアトラクションに並んだりしないといけないだろ?」
「はいはい」
「なんで投げやりなんだよ……?」
そんなふうに、普段しているようなやりとりをしながら、俺たちは遊園地に向かうのだった。
――だけど、やはりどこか、桂はぎこちない。
なるべく普段通り装っているようには見えるが、逆に言うと、装おおうとしているように見えてしまうのだ。
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