凡人少女は嘘を吐く

暗雲

第1話 凡人少女と物語の始まり


 唐突であるが、私は人が嫌いだ。私もだがあらゆる人は日常的に嘘をつく。

 嘘は誰かを守るため、誰かに心配をかけないためなどある程度必要なことなのかもしれない。しかし、不必要な嘘もある。


 その不必要な嘘とはなにか? 例えば、貴方は友達と外で遊んでいます。しかし、貴方は近所の家の窓を割ってしまいました。それはきっとその家の住人に怒られてしまうことでしょう。

 それに対してすぐに考えつくことは二つ。


 一つは『わたしがやりました』と、正直に言ったらもしかすると許してくれるかもという考え。

 そしてもう一つが怒られないために『〇〇がやりました』や『私はやっていないです』と、嘘をついてしらを切るという考えが二通りあります。


 さて、この例を見て貴方は第三者として嘘つく人物についてどう思う? 貴方は彼を加担するために同意の意見を持つか、素直に謝った方がいいだろうという批判的な意見を持つか……。


 この答えは貴方自身である。


 私としてのこの話への回答は、素直に謝った方がいいだろうと思っている。理由は様々だが、怒られる。喧嘩になる。といった問題を絶対ではないが回避する。または、相手の怒りを和らげる最善の答えだと思っているからだ。


 とまぁ、こんな話は部屋の隅に置いておくとして、いい加減に自己紹介をしようと思う。私の名前は天明宵音。高校一年生であるわけだが、今の生活は引きこもり気味なところではある。何? 学校行けって? 一応行ってるさ、留年しない程度には……。


 現在の時刻は午前6時37分。徹夜で作業をし、今も自分の部屋でパソコンの画面からネットを見ている。


 初めに言ったが嘘は嫌いだ。でも実は、ネットは好きだったりする。インターネットは情報を発信出来たりするが、情報の中には嘘だったりするものが多かったりするし、炎上なんてものもある。炎上には、人を祭り上げる悪い人も正義感の強い良い人だって集まって、好き勝手言っていくのだ。それは恐ろしいと思う。

 それとは似たようで違うようなことだが私は動画サイトに動画をだしている。


 ここで言うと、特技という特技ではないが、私は器用貧乏である。あらゆるすべてのことが全て人並みにはできるが、それだけなのだ。努力をしても最終的には他人に劣る。だから、自分が遥か底に沈まぬように自己作成した楽曲、無料ダウンロードボイスを使ったゲーム実況。MMD動画などと多種多様なものを動画サイトに投稿している。

 そんな活動をそれでも私のチャンネルの登録者は100にも満たない。コメントだって、


・ピンと来る歌詞じゃない

・ゲームヘッタクソやんwww

・MMDの完成度が低いですねww


 こんな感じである。私はこんなアンチに等しいとも言えるコメントでも、嬉しい。だって慰めの嘘ではなく、正論だから。

 でも、私はいつか何かでいいから認められたい。

 そして今の自分の遥か何十歩も先をゆく目標に並び立てるようになりたい。

 まぁ、今のまんまじゃだめだということは分かっている。いつものように思う今日もまた、そんな日を願って動画を投稿しているのだ。


チリリリリリ


 隣の部屋から目覚まし時計の音。隣は兄の部屋である。私の家族は母と父、そして兄と私の四人家族だ。きっと今頃、お母さんがリビングで朝ご飯を作っているだろう。私は作業机から立ち上がり、家族のいるリビングへ向かった。


 ・

 ・

 ・


「おはよう」


 リビングに入ると、先に私以外の家族がすでにいた。


 ここで紹介すると、キッチンで朝ご飯を作っているのはお母さんの『天明雫』。おっとりとした性格で見た目はまだ若々しくかわいい系の美人だ。


 次にテレビでニュースを見ているのがお父さんの『天明翔吾』。一家の大黒柱であり、優しく、ものごとに冷静に意見をだしながら、相手を気遣う事のできるパーフェクトなお父さんだ。ちなみに少しだけ髭を生やしたイケオジな感じで夫婦揃って顔面偏差値が高い。


 最後にお兄ちゃんの『天明来夜』。いつも両親の遺伝子を引き継いだ高身長のイケメンフェイスであらゆる女性を惚れさせているが、本人はそのことに気づいていない。それと人前では真面目で優しく、加えて運動神経がよくて成績もいい。しかし、家では私にひたすら甘い、いわゆるシスコンであるそれも重度の。


 そんなハイスペック家族で私はそこまで顔がいいわけでもなく、運動神経はそこまでなくて成績も普通。我が家の人をよく知っている人からすれば『天明宵音』は落ちこぼれである。


「妹よ。今日は学校に行くのか? 流石に、留年は洒落にならないからお兄ちゃんは心配だぞ」


 お兄ちゃんのシスコンは重度であるが、こういう心配してくれるのは心が休まる。

 そもそも私としては中学時代では今の高校に行きたいと思って受験したが、今はその合格した学校にあまり行きたくないのだ。


 最近の学校生活では話しかけられることはあるが、その内容がいつも同じ、『貴女のお兄さんの会わせてくれないか』とかであからさまにお兄ちゃん狙いだし、私をお兄ちゃんに会うためのただの道具のように見ているようで嫌でしかない。

 というよりお前らじゃ私のお兄ちゃんの彼女として似合わねぇよと言ってやりたい。

 

「今日は引きこもる……。学校は明日行く」


「そうか」


「朝ご飯できたわよ〜」


 お母さんが朝ご飯ができたようなので家族揃ってテーブルに座る。

 食卓に並ぶのは我が家ではいつも変わらずの味噌汁にふっくらとした白米、そして砂糖で甘めに作られた玉子焼きとちょくちょくお母さんが近場のスーパーで買ってくる安い焼き魚だ。


「「「「いただきます」」」」


 いつもの母の味を味わい、朝の団欒が始まる。

 今日はまた引きこもると言ったが何をしようか。動画の撮影? 編集? それとも楽曲制作とかだろうか。

 様々な選択肢があるからこそ迷うのだ。

 そんな思考を繰り広げながらも自分の朝食を食べ終え、流しに食器を運ぶ。


「ごちそうさまでした」


 そうして、私は今日も作業をするために自室へと戻っていった。


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