第6話「好きの気持ち」

 結局あの後みあは仕事で疲れていたのか僕のベットでそのまま寝てしまった。


 僕はその隣でスマホを弄りあまみに連絡をする。


『遅くなってごめん、それで話って何?』


 すると直ぐに既読になり返信が来た。


『あのね、実は私気になる人がいるの』


 それは僕が思っていたのとは全く違った類のものだった。


『それでね、今日その人と初めて一緒に帰って帰り道にカフェに寄ったりもしたの』


 ん?


『本当は来週にある花火大会に誘いたかったのに勇気が出なくて誘えなかったんだ…』


 んん??


『連絡先だけは交換できたんだけどねー…それでさ、どうすれば誘えるのかとか男の子の意見が聞きたくてさ』


 気のせい…だよな?


『ちなみにその男の子のどこが気になるとかあるの?』


 するとしばらく時間を置いてから返信が来た。


『それはね、まず学校では大体1人で本を読んでるかその人の唯一の野球部の友達と話してるかしてないんだけど他の男の子と違ってガツガツ?してる感じがないし近くで見てみると実は凄いかっこいいし何よりその友達が授業で疲れているところを楽しい話題を振って元気を出させてあげたりしたり今日なんて迷子の子供を連れてお母さんの所まで一緒に行ってあげたりしててほんとに優しいの!』


 やっぱりこれは勘違いでは済まされなかったな…


 ド底辺Web作家の僕を初期から応援してくれてる超古参読者の@7seaさんはどうやら同じ学校の学年一の美少女、七海天音らしい。


 でもそんな驚愕の事実をも上塗りしてしまうほどの更なる驚きの事実があった。


 おいおい待て待て、もしこれが本当だとしたら天音の気になってる人ってもしかして…いや、もしかしなくとも僕にならないか?


 男の影を1ミリたりとも見せてこなかった学年一の美少女にこの僕、更科裕涼が気になられているということになる……。


 ちょっと待てそんなことあるはずなくないか…?


 もちろん気になられているということは嬉しい。


 だけどそんな突然の事実に頭が追いついていないのだ。


『えっと、それは好きとかじゃなくて気になってるだけ、なのかな?』

『うん、と言い切れはしないかも』

『どーして?』

『私誰かを好きになったことなんて無いからさ…いや、昔1回だけあったけどはるか前のことでその時の感情をあんまり覚えていないんだ。だから、これが好きという感情か分からないの』


 あー、そういう事ね。


『もっとその人と話してみたり関わってみたりするのがいいんじゃないかな?そしたらその感情がどういったものかもわかるかもよ』


 「好き」ではなく「ただ気になるだけ」だという感情に気づくと思うから。そう思って送った言葉だった。


 でも今更ながら思う。


 この選択が僕の穏やかな生活を全て消え去らせてしまったことを。


 そして、その選択の先に、数え切れないほどの幸福があったということを。

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